36杯目

家に帰って玄関のドアを開けたらとりあえず

『誰だ!!』

と叫んでから入る小心者松原だよ。おはよだよ。
もう忙しいなんてもんじゃないです。
一日睡眠時間が2~3時間のみで生きていて耐え難いです。
全く遊んでもいないので、こういう時は彼女でも側にいて優しくしてくれたらな~って思うのですが、そんな僕でも色んな恋をしてきました。

一番キツくて印象的なのが大阪の彼女と付き合っていた頃、急に連絡が取れなくなり毎日何回か電話しても一切出てくれません。
数日毎日かけ続けて、やっと電話に出てた。

「もしもし!ジェニファー(仮名)?俺やけど…」

僕が最後の言葉を言い終る前に受話器越しの声が勢いよく遮る。
明らかに男の声で。

『誰?自分?何かめっちゃ電話してくるけど何?』

えええ!?完全にヤンキーっぽい男やん!

「いや…あれ?コレってジェニファー(仮名)の携帯では?」

『そうやけど、これ今、俺が借りてんねん。』

「へ?あ、…そうですか?ではジェニファー(仮名)さんの携帯番号って知っていますでしょうか?」

『知らんわ。ま、何にせよもう迷惑やから電話かけてくるのやめてくれへん?』

もう完全にキレ口調。

「あ…すみません。わかりました。」

そう言って電話を持ったまま呆然としている松原に電話を切る瞬間の受話器から複数の笑い声と共に女性の声が聞こえる。

『あはは!今のめっちゃうま~ぃ…』

ガチャ。プー…プー…プー…正直仕事中だったので冷静を装い、レパートリーの中から一番の笑顔を纏い、
周辺に察知されないようにすぐ事務所のトイレに駆け込み声を出して便座を濡らしました。

そんな今から5年前の僕はまだ悲しい経験があります。
ツアーで東京・新宿に行き、宿泊する事になりました。
お酒を飲みたくなった僕は一人脱出し新宿の街を歩いているとかなり落ち込んでいる若い男子を発見。
するとそいつが僕の所に駆け寄ってきて

「お願いがあります!うちの店に入ってください。」

いきなりの事に同様を隠せない僕は理由を聞くと、所謂マッサージ屋さんの呼び込みのお兄ちゃんで今日一人もお客さんが入っていないらしい。
田舎から出て来て本当に生活に困っていてこのままじゃクビになりますとの事。
困った奴をホっとけない松原はしょうがないので

「わかったよ。マッサージだね?いくらなの?」

『ありがとうございます!本当には5000円なんですが3000円でいいです。』

そのまま人助けと思い入った店内は超如何わしい店の作りで不安が溢れ出す。
するとかなりスレた感じの女性が出て来て上半身だけ脱いで下さいといわれる。
言われるがままに、 うつ伏せで寝転がりそのまま指圧。
続いてよく判らない白い粉を背中いっぱいに擦り付けてくるが敢えて問わず沈黙を選択する。
すると何がなんだか判らない松原にその女性が問う。

「SMプレイかノーマルどっちにする?」

エエエッ!?今なんてっ?

「いや、そんなん僕いいです。」

『そう?ではこれで終了なので1万円になります。』

「え…?どういう意味?」

完全にマズイ流れである。

『いや、貴方パウダーマッサージしたでしょ?だから1万円になります。』

ってゴラァ!ああぁんっ!はぁ?何が1万円?こらハゲ! なんで勝手にやられたパウダーに払わなあかんのじゃ!

「帰る!」

怒りに満ちて店を出ようとすると脱いだ上着の服が無いでは無いか…

『ちゃんと払ってくれないと返せません。』

「こいつホンマええ加減にせーよ!」

完全にブチ切れた松原が怒鳴りまくると、 その女は壁についている非常ボタンみたいな奴に手を伸ばそうとするでは無いか…!!??
それ押したら怖い奴とか来そうやんけっ!

「おいおい!いや。わかったから!」

危険を察知した松原は慌てて動きを止めしぶしぶ1万円を支払って慌てて脱出する。
するとさっきの呼び込みの男がこっちを見ているでは無いか!
憤慨の松原は男目掛けて追いかける

「コラ待て!」

泣きながら走る松原はさっきのパウダーがまだ残っていて服と擦れて“カサッカサッ”と悲しい効果音が新宿の街に木霊す…
結局見失いホテルに帰りパウダーを洗い流すときの虚無感と脱衣所から浴場に行くまでの周囲の視線は衝撃的です。
新宿歌舞伎町に“ギャ粉”と言わされた夜となる。

-2007/06/05 update-