5杯目 「居酒屋ビル脱出劇」

最近の打ち上げの話…

いつもの様に暴れて酒を飲みまくっていたの。

10月は打ち上げの無い日が5日程しか無かったの…。
もうミラクルに睡眠不足が続き、疲れ果ていた松原は打ち上げ会場の個室では無い、使われていない個室に入り仮眠を取る事にした。

幸い誰も使っていない部屋があったので電気を消し横になった。
… ふと目が覚めた松原。

真っ暗で何も見えない。
テンパっていてココがドコか分からなくて泣きそうになった。
数秒後、記憶が蘇りココは居酒屋で松原は仮眠を取っていた事を思い出した。
そして「早くココから抜けだしたい!」と本能的に察知した松原は暗闇の中から扉を手探りで探し、部屋の外に出た。

するとソコは明るくにぎわっていたはずの居酒屋で無く、暗闇の空間だった…
冷静沈着な松原は慌ててふためいた後に状況を飲み込んだ…。

そうなのだ。みんな帰ってるのだ!
みんなどころか店員も帰ってるのだ!

「店が閉まってるのだ!しまった!!」

 

なんて上手くも無い事を言いながら、泣きながら脱出経路を調べてた。
当然窓も扉も全滅… 唯一開いた窓はトイレの窓。
外には地上6階からの神戸の夜景が広がる。

「さすが神戸は100万ドルの夜景!」

なんて感傷に浸る余裕も見せる松原の器は相当なものだ!

しかし現状の松原は打ち上げ中に仮眠を取り、みんなに置いていかれ居酒屋に閉じ込められたただのクズなのだ。
するとそんなクズの目に非常階段が飛び込んできた!
恐る恐るノブの下の鍵を開けてみると

「ガチャッ!」

「助かったぁ!」

扉は見事に開いたのだ!

そこから急いで階段を駆け下りた!
でも何かいつもと感じが違う… 足の痛みに気がつき、よく見ると松原は裸足じゃないかっ!

それもそうで居酒屋に閉じ込められるバカはいても、座敷の居酒屋の中で靴を履いて飲むバカはいない。
またあの暗闇の居酒屋に戻り、靴を探したが暗すぎて何がなんだかわからない!下駄箱の鍵なんて当然見つからない。

数分の捜索は失敗に終わり、 松原は禁じ手の「トイレスリッパ」で帰る事にした。

緑色のダサいスリッパは松原のズタズタなプライドにジャストフィット!
そして非常階段から泣きながら駆け下りると2階の扉が閉まっていた!

しまった!ハメラレタ!

しかしその横に罠かもしれないが、扉があったので恐る恐る開けてみると「24時間の漫画喫茶」の受付…

ここは6階建てのテナントビルで唯一24時間営業の漫画喫茶がこの脱出劇の最終難関になった。
もう怖いもの無しの松原は真顔で漫喫の中を横切ってレジの店員の超怪しい目線を背中に浴びながら、スリッパの松原はエレベーターに乗り込んだ。振り返って店員の顔を見る勇気が無いので背中を向けたまま自動で扉が閉まるのを待つが、エレベーターの扉が閉まるまでの時間がこんなに長く感じた事は無かった。

だが、この難関を乗り越え、このビルからの脱出に成功したのだ。
映画になってもおかしく無い主人公の冷静な判断力と襲いかかる危機の連続。

しかし車の鍵も携帯電話もサイフも靴もプライドも全て居酒屋に置いて来た松原はこれからどうすればいいのか?
便所スリッパでどこにいけばいいのか?

松原は考えた。

 

 

 

もし映画の主人公であればこのピンチをどう切り抜けるのか?

 

考えた。

 

 

そして気がついた。

 

 

 

 

 

 

映画の主人公は絶対こんな状況にはならないと。

-2004/11/03 update-