91杯目「犯人は誰?」

  コンビニでお弁当を温めてもらっている間はもちろん後ろに並んでいる人に
『あそこで温めてる弁当俺のなんすよww』
って自慢するぐらい温もりが大好きな松原のコラムが春の足音と共に今月もやって参りました!(ネットより抜粋)

っつーことで最近やたら日帰り東京出張が頻発している先日の出来事。
ほぼ最終に近い便で新神戸に到着。
睡眠不足が手伝って新幹線の中は爆睡。
完全に寝ぼけたまま新神戸駅に降り立ち、頭がボーっとする中でフラフラ歩きながら改札に向かう。

一番最後に新幹線を出て、しかもゆっくり歩いているのでホームには人がほとんどいない。
しかし男性3人組が松原と同じぐらい、いや、もっとゆっくりのペースで寄り添って歩いている。

「気持ち悪いな…」

と思いつつ、まだ頭が働いていない松原はその3人組の後ろを歩く。

するとその3人組の1人が松原に気付き、また歩を緩める…。
「ん?」
何故かムっとした気持ちになり、そこからはどっちがゆっくり歩くか勝負が始まってしまう。
長いホームでの緊迫した勝負。互いに意識しているがしていないフリでゆっくり歩くハイレベルな試合。

だが、すぐにどっちでもよくなり、松原がその3人組を改札の直前で追い抜く事になる。

この戦いなどまったく気にした素振りを見せない見慣れた新神戸駅。
行きの新神戸と違うのは改札の横の喫茶店の灯りが消え、「close」の看板がぶら下がってるぐらいである。。
そしていつも通り、改札をくぐろうとした瞬間!

目の前に所狭しとカメラを持った報道陣が改札の前に立ちはだかっているでは無いか!

まるでゴール近くのフリーキックに備える相手チームの選手の様に。
「こ、これは何事だっ!?!?」
そんな疑問の前に寝ぼけたままの松原は今日の一日の行動に何か非社会的な行動が無かったか振り返ってしまう。
が、今日に関しては新聞に載る様な非社会的行動は取っていない!
もしくは「自分は売れてしまったのか?」なんて事も一瞬だけ考えてしまうナルシストさにセルフドン引き。
しかし記者は松原が改札をくぐるとほぼ同時にグッと歩を進める。
「や、やっぱり俺なのか?」
少し狼狽えながら、でも「俺の訳がない!」
確証の無い自信が松原の背中を押す。

そして記者の前まで来ると明らかに手前の松原では無く、
その奥の何かをパシャパシャと撮影しだす。

「え!?」
後ろに何が!?

…ドキドキしながら振り返ると!
さっきの3人組を報道陣が猛烈に激写しているでは無いか!?

えええ!?さっきの奴、誰なーん??

ゆっくり歩く競技の有名なやつぅ?
とにかくこの混乱を落ち着かせるために3人組を初めて正面から確認する。
3人共おっさんで険しい表情。真ん中の奴の手には手錠。
至って普通の3人。何が珍しくて写真を撮っ… て、

手錠!?!?!?!

え?うわっ!やっぱ手錠やんっ!?

って事は何かの犯人を護送している私服警官??
初めて見る光景に戸惑っていると手錠をかけられた男が両サイドのおっさんに連れられて改札をゆっくりと通り抜けてくる。
自分の半径2m以内で体験した光景の中でも最上級に刺激的な光景である。
刺激的すぎて松原はその記者の輪の中に入ってiPhoneで撮影に参加。
自分でも説明出来ないが撮れるだけ撮らなければと焦り、シャッターを連打。
さっきまで謎の勝負をしていた3人組を追いかける。
そして遂に3人組が構内から外へ出てしまう。これでもう撮影が終わるのか…、

そう諦めかけた瞬間、私服警官が護送用の車の場所が分からなかったみたいでまた構内に戻ってきたのだ!
そして可愛そうにこの犯人は新神戸駅をぐるぐると回遊し、
まるでファッションショーの様に我々に絶好のアングルを選ばせてくれる。
松原は記者に負けじと撮り続ける。
というか記者達も絶対もう充分のはずなのにまだ撮影を続ける。
だって一向に護送されない犯人を置いて帰るのは犯人に失礼である。
これは護送されるまで撮り続けるのがマナーであり、自分との勝負である。カ
メラを持った全員がそう考えているに違いない。10分ほど撮影しただろうか。
ようやく護送車がやってきて連れられていく犯人。遂
に勝負に勝った!言葉に出来ない充実感が新神戸に広がる。

そしてようやく会社に戻り、どんな犯人なのかすぐにネットで検索。
しかし何もヒットしない。翌日も朝からTVや新聞をチェックしても全く出て来ない。
彼は一体何で捕まったのだろうか?結局、今もあの犯人がなんだったか分からないまま。
もしかして報道陣はこの情報を温めている最中なのだろうか?
だとしたら、温もりが大好きなくせに温めきれず、すぐにコラムに書いてしまった松原は負けてしまった事になる。
っていうか松原の負けでいいからホンマ、教えてください。
あいつ誰やったん?

 

-2012/07/16 update-