コラム「人生打ち上げかけつけ」

松原裕 コラム

2005年より13年間1ヶ月も休まずに連載を続けている太陽と虎代表 松原裕のマンスリーコラム。

人生とは打ち上げのように激しく乱れて華やかに散る。
ならばかけつけイッキで酔ったもの勝ち。

そんな日々起こる不可思議で愉快な体験を綴る太陽と虎マンスリーコラムスケジュール誌に連載中のかけつけコラムWEB版。

笑いをアテに何杯でもイッキしてください。

※本コラムは本人が「がん」を理由に2016年10月を持って休載しておりますが、「絶対休む機会を探していて「がん」になって「よっしゃ!これや!」と思ったに違いない。」「連載が始まって13年間140話以上書き続けてネタ切れになったんじゃないですかね?」関係者談。
「そ、そんなわけないやん!ネタが溢れて溺れそうやわ!ただ体調が…。」本人談。

という事で2016年10月より、体調が良い時にWEB版のみ更新する不定期連載になりましたので、テレビの裏面を掃除するぐらいの頻度でこのページも覗いてくださいね。

129杯目 「ロッカーの鍵」

ごきげんよう。松原の痛快コラムのお時間だよ!

今回も皆様に楽しく読んで頂けます様、頑張りますので

“何年も浪人している息子が自暴自棄になってしまったけど何回も説得をして、最後にもう1回受験する気持ちに変わり、家計も苦しい中で無理して雇った高額家庭教師に対するテンション”

でよろしくお願いします!!!

と言う事で先日、京都でイベントを開催した時のお話です。

基本的に所属アーティストに帯同して外のイベントに行った時の松原は現場に居ても特にする事が無く、肩身も狭く、居場所が無い中で頑張っているのですが、
唯一!!自分の存在価値を感じる仕事があります。

それは所属アーティストの財布を預かる任務です。

この仕事だけをしに行っていると言っても過言では無い松原ですが
もちろん今回も財布を預かる訳です!

財布を預かる瞬間だけは、自分の存在意義を感じ、アイデンティティーが確立する快感。
自分はこの社会から世界から必要とされていると確認できる。

今日もしっかり責任あるこの業務をこなし、ライブ終わりにメンバーに手渡すその時まで緊張と充実を独り占めするのです。

しかし!今回は少しイレギュラーな事に本番前では無くリハーサル前に財布を預かって欲しいとお達しが。
という事はトータル7時間も預かるという異例の状態に。
さすがにそんな長時間も人の財布を預かり、緊張を背負い続けるなんて出来ない。
そう怯えてしまった松原は、禁断の技を思いついてしまう。

それはあるまじき行為。
アスリートが緊張とプレッシャーから逃れる為にドーピングを行うのと同様の行為。

罪の意識が無かったと言えば嘘になる。
魔が差したという言葉では言い訳にならない事も解っている。
でもしょうがなかった。
7時間も緊張と二人三脚する自信が無かった。

…そう、財布をイベント会館の貴重品コインロッカーに預けてしまったのです。
ついでに自分の財布も一緒に。

神様、言い訳するつもりはありません。
でもライブ終わる前に取り出せばバレる訳が無いという甘い考えもあった。
そう、バレなければいいんだ。
そんな軽い気持ちで預けてしまった2つの財布。

これが不幸の始まりである。

無事何事も無く、ライブが終わり、良きタイミングで取り出そうと考えていた矢先に普段、大した仕事の無い松原に数々の業務が圧し掛かってきたのです。
業務をこなし、退館時間ぎりぎりで飛び出し、ようやく打ち上げ会場に合流。
珍しく忙しい自分に酔いしれ、美味しいお酒が飲めると席に着いた瞬間!

悲劇は一瞬で襲ってくる。

「あ!まっちゃん、預けてた俺の財布返して~

…絶句とはこの事である。

そうなんです!預かった財布は貴重品ロッカーの中である。
慌てて会場に連絡するがもちろん閉館なう。
唯一の生きがいとしていた財布を預かる業務の失態に愕然。
苛立つメンバーに極上の謝罪を繰り広げ、明日朝一で会館から財布を取り出し、家に届ける約束を交わし、何とか納得してもらう。
そして“財布さえも預かれない”無一文の松原は行く宛ても無く、ただただ夜風にあたりながら京都・木屋町を徘徊。

行くあてもなく、途方に暮れ、鴨川を見つめながらポケットから取り出したロッカーの鍵。
何もする事なく、鍵を見つめていると重大な事に気づく。
これはロックバンドのメンバー=“ロッカー”の財布を入れた“ロッカー”の鍵。
言うならば“ロッカー”の鍵の中の“ロッカー”の鍵!キングオブ“ロッカー”の鍵なのだ!

以上。

※補足:「え?松原クラスの人間がこんなダジャレを?」と疑問を持たれた方へのご説明
オチにワザとこの“ロッカー”の鍵と言うクソしょうも無いダジャレを使い、スベって読者の皆様の信用を失う事は今回の失態に対する自分への戒めと考えております。

128杯目 「警備計画は安全第一」

先日、病院でかゆみ止めの薬をもらった。
電車の中で暇だったので処方箋の中にある薬の詳細を読んでみた。
副作用に「かゆみ」って書いてあった。

はーい!と言う事で今月も始まりました痛快コラムのお時間ですよ。

電車の中で読んで笑わない様にしてね。

って訳で先日ようやく「COMIN’KOBE15」が無事大成功にて終わり、徐々に日常を取り戻せてきた今日この頃。
今年もCOMIN'KOBEの準備にボコボコにされて殺されかけたのですが、イベントというのは様々な準備がございます。
もちろんブッキングもそうですが、それ以外にも会場のレイアウトを作ったり、資料を作ったり、出展者や会場と打ち合わせをしたり…と、やる事は計り知れない。

そんな中、とても重要であり、大変な作業があります。

それは警備計画

イベントが安全に行われる様に警備を計画するのです。
そしてわが町、兵庫県は雑踏警備に力を入れている事で有名で、COMIN’KOBE は警察にとっても重要視されてしまっているのである。
ここ数年は大丈夫だったのですが今年、会場が変更になる為に1から警備計画をやり直しするので急遽、県警に呼び出されて説明をする事になる。
しかし抜き打ちチェックという事もありまだアバウトにしか出来てなかった為、ボコボコに怒られてしまった。

あまりにも怒られるので「毎年やってるので大丈夫ですよ!」と返答すると 「大丈夫と安全は瞬間で変わる!雑踏は生き物や!」という名言が飛び出してきた。目からうろこデス。

という事で再度提出しなおして、現場視察を行うという事態になってしまった。
県警の偉い方が数名と所轄の地域課や交通課など大量の警察に加えて、なんと!とある大学の雑踏や建築の研究をしている先生がアドバイザーで参加するという一大事の視察となった。

実行委員会も誘導責任者、警備会社、会場担当者などを引き連れて20 名ほどの一行でCOMIN’KOBE の会場をくまなく視察し、入場方法や入場規制になった時の規制方法、来場者の導線などを徹底的にチェックをしていくのです。
アドバイザーの大学教授が“そこまで心配する?”的なチェックの連続で、3時間を超える検証となる。
確かに安全対策に限りは無い!しかし「ほんまそのチェックいる?」的な現場検証となった。
そして署に戻り、会議室で質疑応答となる。

県警からの質問、地域課の質問に答え、そして大学教授からの総評となる。

いよいよクライマックス。
一体どんな総評になるのか、一同はその発言に唾をのみ、耳を傾ける。

「えー、とにかく安全対策には100%はありません。常に意識して運営をしてください。私からは以上です。」

 …っええええ!?そ、それだけ?
いや、それ俺でも言えるで!

あまりにも驚いたので松原はずっと疑心に思っていた質問をしてみる。
「先生はフェスとかコンサートとかはよく行かれるんですか?」

すると

「私は音楽には疎いので行った事はありません。」

って来た事ないんかーいっ!!!ほな何わかんねーんっ!!!

県警の苦笑いと共に現場検証はこれにて終了となる。
さすが安全を研究してる大学教授、コメントまで見事、安全でしたね。

127杯目 「人生とは選択の連続」

人生とは選択の連続。

常に2つの道の選択が続き、最後は誰も同じ場所に辿り着けない自分だけのゴールが待っている。
そして松原は2つの選択があった時に常に意識している事は舗装された道では無く、険しい道を選ぶ様にしている。

その道では大きな石につまずいたり、枝で足を切ったり、舗装されていない歩きにくい道だけどその分、人とは絶対違う場所に辿り着くと信じている。

そんな松原は頻繁にある出張の際にまずホテルを抑えないという選択を取る。
流木スタイルと呼ばれる手法で流れるままにその夜を明かす為である。

先日の東京出張ももちろん流木スタイルで向かう。
前日からほぼ寝ずに東京に辿り着き、イベントを終えて打ち上げへ。
もちろん二次会、三次会と続いていく。
気が着いたらもう朝の5時前。

やはりホテルを取らなくてよかったと自分の選択の正しさを噛みしめて、始発で神戸に帰る事にする。
時間を調べると4:49渋谷発⇒5:02品川着⇒6:00品川発で新神戸に帰れるでは無いか!
時計を見ると4:30。急いで渋谷駅に向かう。
そして無事4:49発の始発電車に乗り込めた。
車内はある程度空いているので座席に腰掛け、5駅先の品川までの10分程度を仮眠の時間に当てる事とする。

ご存じこの電車は山手線という電車で人生とは違って終着駅は無く、全29駅を永遠とループし続ける悲しい鉄道路線。
目の前に吊るされた人参を追いかける馬の様に、あるはずの無いゴールを目指して走り続ける。
岐路を楽しむ事が出来ない山手線がなんだか不憫に思えてしまう。
そんな事を考えていたが睡魔が覆いかぶさって来るので思考を止め、仮眠に入る。

電車の揺れとはまるでゆりかご。心地よい音と揺れ。
酔いも手伝い松原はほんのわずかな安息を手に入れる。

そして目が覚め、車内にある現在地の案内を見上げる。
すると「新宿」と「代々木」の間にいる。
「品川」までは7駅先。
まだ眠れるので目を閉じ…「ん?…な、7駅先っ!??!えええええええ!?!?」

確か5駅先だったのに何で7駅先に?
もしかして内回りじゃなく外回りに乗ったのか?
慌てて電話を飛び出し、代々木駅ホームに降り立つ
。しかし降り立ったホームは“内回り”。

もしかして山手線を一周してしまったのか?

山手線の一周は確か24分。
そんな時間を眠っていたとは思えないが、とりあえずまた7駅先の「品川」に向かう。
座席に腰掛け、襲ってくる睡魔に身を任せる。
そして目が覚めると「品川」まで10駅先の「高田馬場」。

し、しまった!は、ハメられた。

山手線の罠に完全にハメられたのである。
それから「品川」に降りれる事なく、山手線の蟻地獄にどんどんハマっていく。
もう時計は朝の8時を指す。
すでに3時間も山手線に閉じ込められている。
自分への苛立ちが溢れ、雪山で遭難した時ぐらい眠る事が怖くなってくる。
絶対寝ずに「品川」に辿り着く事を決意する。

山手線なんかに負けてたまるか!

…しかし人間がどんな兵器を発明しても睡魔に勝てる訳が無く、また眠りに落ち、気が付くと「日暮里」。
これはこのまま乗るより一回降りて外回りに乗る方が早いと思い、電車を乗り換えるもまた睡魔が忍び足で襲ってきて、気が付くと「新大久保」。

ここドコヤネン!

嗚呼ぁ。もう松原は二度と山手線から出る事は出来ないのか…。
時計の針は当初神戸到着時間の10時を指す。
そしてここで予想していなかったまさかの岐路に立たされる。
先ほどまで山手線は岐路の無い鉄道路線と憐れんでいたが、そんな事は無かったのだ。

人生とは選択の連続。

このまま山手線に乗り続け生涯を終えるのか?
それとも頑張って品川で降りるか?
どちらにしても険しい道のりである。

126杯目 「5速違い」

日本という国は世界と比較しても交通事故は少なく、先進諸国の中で上位にランクされるほど安全な国である。
しかしそれでも年間で6万件の交通事故が発生している。そんな状況の中、松原が育った町の教習所は安全に関してかなり徹底した教育がされている。
とくに松原が感心したのは学科授業が始まると教官が挨拶と共に「安全5則!」と叫ぶのだ。
するとその声に反応して教室にいる全員で「1、シートベルト」と叫び、シートベルトを締めるジェスチャーをする。続いて、「2、ミラー確認!」と叫び、サイドミラーとフロントミラーを目視する動きをする。

という風に車の安全運転に対する5つのアクションを声と共に体に沁みこませるという素晴らしい教えがあるのだ。

現に松原もパブロフの犬ばりに条件反射で体が勝手にシートベルトの動きをしてしまう程、毎回毎回必ず授業の最初にこのアクションを行うのだ。
素晴らしい教習所と街の中でも評判で、事故率もこの学校の卒業生は少ないと予想出来る程である。
そんな教習所に通っていた20歳の松原は、最後の仮免試験の「高速道路」に挑戦をする事になった。
これに合格すれば晴れて仮免許。教習所での最後の試練である。
運転免許を取得されている方はご存じの通り、この高速道路の実践は大体2人組で行うパターンが多い。
松原ももちろんペアになる訳だが、その相手というのがこのコラムにも登場する事が多い「O島くん」である。(過去コラム9杯目など参照)

相当天然で有名な彼とのペアで非常に不安であったが教官がもちろん一緒なので、安心していた。まず最初に彼の運転で高速道路に挑戦となる。

助手席には教官、後部座席には松原、そしてもちろん運転席にはO島くん。軽く手が震え、緊張した顔で高速道路に車が踏み込んでいく。
何とか流れに乗り、順調に高速道路を進んでいたその時!
目の前に走っていたダンプカーのタイヤが急にバーストしたのである!

これには全員が驚き、目の前のダンプカーはハザードを焚いてスピードを落としていく。

しっかりと距離を取っていたので幸い、追突する事は無く左車線から目の前のダンプカーを避けようと右車線に車線変更するO島君。
しかし悲劇はここからである。
案の定、テンパっている彼は右車線をしっかり確認せずに、目の前のダンプから避ける事だけを考えて、右車線に入ろうとした瞬間!丁度そこは右車線から高速に入るインターチェンジがあったのだ!
そしてO島君が右車線に入った瞬間に後ろから車が勢いよく侵入してきたのである!!これは追突する!!!
我々は焦って叫ぶ!「危ない!後ろ!」

しかしO島君は先ほどのダンプカーのバーストでもう完全にパニクった状態なのだ!

我々が叫べば叫ぶ程、混乱は加速していく。

しかし後ろから車が車線に入ってくる!教官は叫ぶ!

「O島!速度を上げろ!」

しかし彼は意味が解っていない。

松原は覚悟する。
これは衝突すると…。しかし教官は助手席から再度叫ぶ!
「O島!速度を上げろ!速度だ!」
「先生どうしたらいいですかぁぁぁ」
泣き出すO島に教官が大声で指示を出す。

「ギアをあげろ!」

「え??」

「だから5速だ!5速!!!」

その瞬間…。

誰が想像出来たであろう。

「5速」という言葉にO島君は体が反応してしまい、
「1、シートベルト!」と叫んでハンドルを握る手を離し、
シートベルトを締めるジェスチャーを行ったのである。

そう、「5速」を「安全5則」と間違えて。日本は完全なる車社会。

安全運転、無事故は永遠の課題。
そんな思いを持つ我が教習所から今日もまた1件、交通事故が発生してしまった。

しかも「安全5則」が原因で…。

125杯目 「2回目」

結婚とは、ただ一人のために残りの人々をすべて断念せねばならぬ行為である。byムーア。

はーい!という事で多くの読者が「恋のから騒ぎ」を彷彿する名言から始まった松原の痛快コラムのお時間です。
今回のお話は冒頭の名言から推測される通り「結婚」でございます。
この「結婚」というのは様々な見解がある訳ですが、松原に関してはこの2文字を見ると上着を羽織りたくなる程、体が震えてしまうのです。
お察しの通り、思春期をこじらせたまま大人になってしまった松原は20歳で早期結婚、23歳でスピード離婚のバツイチ子持ちのシングルファザーな訳です。

しかし!実は社内には松原と同じく安定のバツイチがもう1人在籍しております。

その名も「山口 雄太(30)」であります。

彼を知ってる方は、「あれ?苗字が“若狭”じゃなかったっけ?」と言う脳内ツッコミをさせてしまったと思いますが、実は以前の結婚で養子に入り、“山口”から“若狭”になり、離婚したけど面倒臭いのか、そのまま“若狭”に成りすましていたという苗字をとてもライトに考えているアッパーな男である。
なのでほとんどの方が“若狭”と認識していると思うのですがそんな彼が“山口”に戻るきっかけが訪れたのである。
なんと!社員旅行中の台湾で出会った素敵な女神と先日!見事結婚をしたのである!!!
三度のメシよりお祝い事が大好きな弊社は全ての業務をお休みし、社員全員で“山口”という本当の姿に戻った彼の結婚式に挑む事は言うまでもない!
普段ロクでもない恰好の我々は衣装に申し訳ないぐらい綺麗に着飾り、式場に向かう。
大阪駅直結の式場に集う我々音楽業界人 vs 新婦側はなんと医者たちなのである!そう!新婦は看護婦の為、参列者は社会に認められた高所得者軍団。
そんなピラミッドの上の方にいる人間へのコンプレックスは人一倍強い我々は相手サイドを威嚇する為に式からテンションを上げて盛り上がる。
そしてお楽しみの披露宴が始まり、松原は会社の代表として“祝辞”を任命される。
披露宴で司会者の次にマイクを使う重大な役。
前日の打ち上げのまま参加している松原は現在進行形で酔っぱらっているが、医者たちに舐められる訳にはいかない!
固く、真面目なスピーチと少しだけのボケを入り混ぜて、この宴のスタートロープを切る。
そこからは楽しい余興と涙腺をくすぐりにくるビデオ演出など、最初は敵視していた医者軍団と打ち解け、松原は各テーブルでイッキ芸を披露する程、打ち解けていく。
そして衣装直しの後は、式場の思惑通り、どんどん感動をこすりつけてくる。

「まんまと我々が感動すると思うなよ!」

そんな意気込みが会場を包むが、アルコールが見事かき消し、クライマックスの新郎“山口雄太”のスピーチでは本人はもちろん、お母さんも号泣。息子と母の涙の形をトレイスする事は容易である。

母子家庭で育ち、恐らくお母さんは一人で雄太とお姉ちゃんを立派に育てあげたのである。
きっと並ならぬ苦労と努力があり、そんな息子が伝える母への思い、そしてこれからの新しい夫婦生活へ明るい未来の扉を開こうとするその場で涙しない母親がいるだろうか。医者軍団もその姿に涙腺をゆるませる。
雄太、お母さん、本当におめでとうございます。
そしてその号泣する母と子の愛の涙を見て、我々はもちろん全員が思いを1つにする。

「…いや、でも、あんたら結婚2回目やん!」

124杯目「三が日」

人間は怠ける事を生まれた時からプログラミングされている。きっとそれは防衛反応。
だからこそ意志や仕事など何かに挑戦する時に目標を置かなければいけない。
その目標とは人それぞれであり、達成する為にその目標だけを見つめる。
だから怠ける事から目を背けれる。

そう、松原ももちろん人間である。

仕事から逃げ出したい事は多々ある。

しかし逃げ出さない為に…
あ!すみません!松原デーース!!自己紹介遅れてゴメンネ。

という訳で今回も始まりました大人気コラムのお時間!

今回は冒頭で述べた通り、松原は1年間一生懸命頑張る為に1つ目標を置いているのです。

それはお正月!

1年中、休息というものは砂漠のオアシスぐらい皆無で毎日携帯は24時間鳴り響き、常に仕事に追われ、安心して眠れない訳です!
そんな365日の中で仕事の電話が鳴らない唯一の3日間。
それが正月の三が日です。
松原はこの3日間の為に362日間戦い続けていると言っても過言ではない。
オリンピック選手が目指す世界一と同じぐらい松原はこの正月を目指している訳です。

そして2014年、遂に大晦日に突入。明日からは夢にまで見たお正月。
皆既日食と交換してもおつりがくるぐらいの3日間。
ドキをムネムネしていると…

なんと大晦日の朝、息子くんが体調不良を訴えだした!

それからドンドン悪化していく一方である。
さすがに心配になり、夜20時に救急病院に連れていく事にした。
この6年間毎年大晦日は仕事だったので遂に「笑ってはいけない24時」を見れる事を楽しみにしていたが、さすがに息子くんの体がギリ大事である!
ネットで検索して辿り着いた救急病院。
中に入るとカルビーポテトチップスに見習って欲しいぐらい待合室はパンパンの子供の数では無いか!?
受付に駆け寄り、子供が体調不良と伝えると

「では待合室でお待ちください。ただ…すみませんが今、70人待ちなのでどれぐらいかかるか解りませんが」受付の人say。

えええええ!!?!70人待ち!?

恐ろしい数である。

しかし引き返す訳に行かずフラフラの息子君と待合室で待つ事にする。

競走馬が試合前に軽くウオーミングアップ出来そうなぐらい広い待合室には見渡す限り、元気の無い子供とご両親たち。
マスク率は99%で、何とも言えないジメ~っとした空気が充満している。
そしてそこからこんなに遊んだ事が無いぐらい暇をもてあそび、辛い時間が続く…。

どれぐらい待っただろう…
ようやく名前が呼ばれた。

病院には着いたのは確か20時半ぐらいだが、そこから楽勝で3時間が経過していた。

そう23時半である。

危なくここで2015年に突入する所だった。
ようやく問診を受けたがインフル検査には20分かかるという究極の選択を突きつけられる。
しかしインフルかどうかはハッキリしたい。
松原は挑戦する事にした。
もしかしたらここで年を越すリスクを抱えて。
そして時計を見つめ、自分の運に問いかける。

俺はここで年越しするのか?

その答えはすぐ解った。

なんと23時45分に名前が呼ばれたのだ!勝った!2014年に勝った!
意気揚々と医者の元に行くと「インフルの反応は出なかったけどまだ反応が出ないだけかもしれないから気を付けてくださいね」say。
グレーな結果だがまた勝った!

息子君とようやく家に帰れる!医者にお礼を告げて、病院を飛び出そうとすると「あ、待ってください。お薬出しますのであちらでお待ちください。」say。
キャーーー!!!!オワター!!という事で薬を待つこと15分。

笑えない病院24時を過ぎて泣きながら帰路に着く。
気を取り直し、今からの3日間の休暇を楽しむ事にするしかない。
このストレスも明日になれば忘れるであろう。
そして布団にもぐり込み、遂に元旦の朝。神様は松原を見捨てたのだ。

いや、神様が悪い訳では無い!松原は、ただあの風邪をひいた70人の子供たちに負けたのだ。
そこから三が日、ベットの上でひたすら風邪と戦い、3日間の記憶が無いまま、気が着いたら1月4日の2015年初出社。
さあ!2015年も362日間走り続けます!

123杯目 「コントとの戦い」

みんな聞いて、聞いてー!!
松原は11/26に発売されたCD「JAPANESE KATANA Soundtrack」のレコ発ライブ東名阪にてコントライブをやって来たんだよ~。

え?何それ?という方に簡単に概要を説明しよう!

そう!あのHi-StandardでありBBQ CHIKENSの横山健監督がメガホンを取ったJAPANESE KATANAという架空のヤクザ映画。
その映画のSoundtrackという設定でCDがリリースされた訳なんです!斬新だね!
そしてその作品の中でなんと!あなたの松原が役者として映画のシーン(ラジオドラマ的な感じ)とコントで収録されているのですよ。驚きだね!(詳しくはHP http://www.pizzaofdeath.com/japanesekatana/ を検索)

そしてそのCDのリリース記念ライブが東名阪の3か所にて行われ、そこで当然、松原は収録アーティストwとして20分(3か所全部新ネタ)TOTAL1時間のネタを行ってきました訳です。驚きだね!

「ってか松原って誰やねん!」

そんな中で行われる誰も求めていない20分のネタ…。

全会場500人以上の満員御礼。
だがお客さんはもちろん、松原さえも望んでいないこの20分は一体誰が幸せになるのか?

毎晩、爽快に鬱状態となりながら考えたネタ。
映像、サンプラー、小道具、大道具などを駆使したネタたち。
はたして一体、松原は何を行ったのか?
そんな声が多くは無いがゼロでは無いのでこの場を借りて簡単にセットリスト(内容)を公演別にご紹介~!

■12/2恵比寿リキッドリーム
①影アナ
②テレフォンショッキング(笑っていいともに松原が出演したという設定でエアタモリに向かって映画の撮影秘話や共演者とのエピソードトークを1人で行うネタ。そして最後はタモリさんから映画の未公開コントをやるように無茶ブリ)
③ネタ(立てこもった犯人を犯人のお母さんが説得するコント。)
④ネタ2(立てこもりコント2で犯人が逃走用の車をありったけのスベらない話を要求して来て、スベらない話をひたすらする)
【会場のウケた量】☆☆☆★★

■12/15心斎橋クラブクアトロ
①オープニング映像
②フリートーク(東京公演ではネタをキメキメで場の空気に合わせれず苦戦した反省を活かして、フリートークから始める)
③誰やねん誰やねんコント(リズムギャグを使った自虐ネタ)
④ダイブ強化週間キャンペーン(今回刑事役という事でダイブで怪我や事故が無い様にダイブの練習をする前振り)
⑤大玉転がし(ダイブして来た人を運ぶ練習として、マジで大玉をレンタルしてきてフロアに投げ込み、観客全員で大玉転がしをする。)
⑥モグラ叩き(次はダイブする練習でお客さんみんなにステージに向かってダイブして来てもらいドラムセットの上にあるDSを取ったらプレゼント。でもステージの上で松原はハリセンでダイブして来た人を叩いて、叩かれたら客席に戻るというモグラ叩きゲーム。でも最終的にグチャグチャのカオス状態になって松原は客席に引き込まれてボコボコになって終了w)
【会場のウケた量】☆☆★★★

■12/16名古屋クラブクアトロ
①影アナ
②ガサ入れネタ(ライブハウスにガサ入れに来た刑事の設定で客イジリ)
③組長を探せ(映画の設定の中で登場する組長をダッチワイフに見立ててダッチワイフを客席に投げて遊ぶネタ)
④強い奴を探せゲーム(客を5人ステージに上げてストッキングを被せて引っ張り合いをさせて変顔をイジる。)
⑤感謝の手紙(全出演者に向けた感謝の手紙。内容は感謝してる風だけど皮肉たっぷりのネタ。最後はお客さんへの皮肉ネタで野次の応酬の中、無視して終了)
【会場のウケた量】☆★★★★

以上!こんな内容で全60分のセットリスト。
毎晩不安で眠れず、ドンキホーテで1万円以上小道具という安心を買い続ける精神状態で過ごした恐怖の3日間。
でもお蔭でせっかくやるのだからとネタで販売した松原Tシャツとマツバラーターはまさかの完売。
ようやく最終日を終え、打ち上げでベロベロになり家に帰宅。
極度の緊張から解放されたのもあり、そのまま玄関で眠ってしまう。
ようやく手にした安定した睡眠。
そして目が覚めると毛布がかかっている。
恐らく母親がかけてくれたのであろう。

優しい母の愛を感じ、起き上がると恐らく帰るなり投げ出した鞄の中身も片づけてくれている。
母への感謝を胸に部屋に戻ると扉の前に綺麗に畳まれた松原Tシャツと昨日使用したネタの備品がその横に綺麗に置かれていた…。

眩暈が襲い膝から崩れおちる。
また精神が病み、眠れない日々が続く予感。
そう、母は一体どう思ったのであろう。自分のTシャツを作っている息子を…。

そしてダッチワイフとストッキングを持っている息子を…。

122杯目 「笑ってはいけない警察署72時以上」

二度ある事は三度ある。先日この言葉を実体験する事件が松原を襲った。
まず最初の事件は、とある週末、夜中黙々と仕事をしていると弊社スタッフが慌てて事務所に飛び込んできた。

「店の横で何か燃えてます!」
「ど、どうこと!!?」

松原も急いで太陽と虎に駆け寄ると、なんと!
隣りの工作所さんから火の手が上がっているではないか!?
しかもかなりの勢いで燃えている…。

大至急消防に電話をして、駆けつけた救急車。
10分程の消火活動を寒空の中で見守り、そこからは通報&発見者として警察に連れていかれ諸々事情聴取を受ける事になる。
通報しただけなのにまるで疑われているぐらい身元も調べられ、深夜3時ごろに解放。

なんかついてない…。

苛立ちの種火を残しながら翌日は外現場での仕事。
朝から1日業務をこなし、打ち上げへ向かう。
そして支払をしようと財布を鞄から取り出そうとすると…

「え!?」

鞄に入ってるはずの財布が無いでは無いか!
鞄に入れていたので落とす訳は無い!
念のため色々電話で確認するが、そもそも15時ぐらいに使ってから鞄にしまって、一度も取り出していない。

これは間違いなく盗難かスリ!

急いで警察に向かい盗難届を提出。
そしてこまかく事情聴取を受ける。
昨日に引き続き同じ警察に行く事になるとは思わず、財布を無くしたショックも合わさり、鬱寸前。

翌日、カードを止めたり、再発行を行ったりと大忙し。
そんな悲しみに耐えながら仕事をこなして打ち上げへ向かう。

打ち上げでは、もちろんヤケ酒である。
失くした財布を偲び、ベロベロになるまで酒を浴びて3時ごろにお開き。
気分も良くなり気持ちよく自宅へ帰ろうと自転車にまたがる。
打ち上げ会場から1,2分自転車を走らせ東急ハンズを超えたあたりでまた悲劇が松原を襲う。
酒に酔った松原は少しバランスを崩してしまい、ほんの少しだけ、ほんの少しだけ通行人の肩にぶつかってしまったのだ…。

するとその男性は「イッテーナ!!」say。

超ガラの悪そうな人では無いか!?
松原は普段なら土下座して謝る所だが運悪く、酒でベロベロ状態。

「ちょっとぶつかっただけやんけ!」と応戦してしまう。

そこからは言い合いとなり、ぶつかった強面の冷静な連れが警察へ通報。
7~8人ぐらいの警察官が松原と強面を囲い込み、そこから簡単な事情聴取と本当に車の事故と同じぐらいの大がかりな検証…。

「え?自転車でぶつかっただけなのに?」

松原は警察官の大げささに詰め寄るが
「これも事故です。しかもあなたは酒気帯び運転となります。」
と無表情で答えられ、チョークを使って黙々と事故検証が行われる。

そして現場検証が終わると松原はそのまま、また警察署に連れていかれて事情聴取を行う事になる。

ほんとに肩がちょっとブツかっただけなのに、なんか凄い事になってしまっている…。
確かに酒を飲んで運転した松原は100%悪いけど、警察官のみなさんも絶対今、ちょっと心の中で笑ってるに違いない。
もはや小さい事を大げさに扱うコント状態!
松原も思わず笑ってしまうのはしょうがない。

そしてアルコール度数検査や、まっすぐ歩けるかなどのチェックをされ、ようやく5時ごろに警察署を出る事になる。

3日連続の警察署。

そろそろ顔見知りになるクラスである。
ようやく自宅に戻り、布団に入った瞬間に電話が鳴る。

「どうも〇〇署の〇〇です。さっき身分証明で預かった保険証を返し忘れてまして…今からご自宅にお持ちしましょうか?」

いや、何時やと思ってるねん!もうええわ!
というツッコミを我慢して「いや、もう明日でいいです。」
と丁寧に返答すると

「では明日、署にてお待ちしております。」

ってまた明日も行かなあかんのかーーーーーーい!?

121杯目 「美容師の復讐」

今年もいっぱい台風が日本を襲っておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか?
神戸に咲く一輪の薔薇・松原です。
しかし台風はいいですね。進路が決まってて。
松原も学生時代は進路に迷い、のりで働き始めたこの音楽業界も15年目に突入。
15年前からライブハウスをやっている訳なので今まで出会ったバンドの数は天文学的な数字になっているはず。
たまに行ったお店とか仕事先でも

「覚えてます?〇〇ってバンドをやっていた〇〇です!」

なんて声をかけられる事も本当に多くなっております。
そんな先日も打ち合わせの合間に小一時間の隙間があり、ふと髪の毛を切ろうと思い立った。
軽くネットで近くの美容室を検索。
早速電話すると「今からならいけますよ」say。

初めての美容室はちょっと緊張するがこのチャンスに髪を切らないといついけるか解らない。
勇気を出してオシャレな美容室の扉を開ける。
イルカの一家がなんとか泳ぎ回れるぐらいのこじんまりした店内の美容室だが雰囲気はとてもいい。
早速席に案内され、30代中盤ぐらいのさすが美容師というオシャレは髪形の男性が松原の背後に到着し、鏡越しに笑顔で挨拶をしてくれた。

「今日はどのように致しましょうか?」
「あ、あんまり時間無いのでパっと適当に切っちゃってください。」
「適当にですか?どれぐらい切りましょうか?」
「う~ん。お任せします!」
「かしこまりました。」

そんなやりとりの終え、早速、よく手入れされたハサミが松原の髪の毛の中に手際よく入っていく。
そしてまもなくして美容師が話しかけてくる。

「音楽関係のお仕事ですか?」

松原の事は知らない様子なのでとりあえず

「まーそんな所ですね。」

と答えておく。

「僕も15年前ぐらいにちょっとバンドやってまして。」

美容師で元バンドマンは結構多い。
別に驚く事では無い。
適当に相槌を打っているととても懐かしい話に突入する。

「僕、パインフィールズってライブハウスが好きでよく行ってました。」

そう、何を隠そう松原が15年前に初めて店長を務めたライブハウスなのだ!
なんか急に嬉しくなり何を見に来たか尋ねてみる。

「なんか丸刈りデスマッチってイベントありましたよね?」

そう!15年前松原が発案したイベントで6バンドが出演し集客が一番少なかったバンドが丸刈りになるという今ではPTAですぐ問題になりそうな画期的なイベントなのだ。
益々嬉しくなり会話が弾む。

「そのイベント、知ってくれてるのは嬉しいな~!なんたって丸刈りにする瞬間が凄い盛り上がるんですよ!みんなハゲになりたくないから集客を頑張るから毎回満員な当たりイベントでしたからね!」

松原の悪い癖ですぐ武勇伝っぽく語ってしまう。
その丸刈りになったバンドマンのリアクションを笑いながら巧みに説明する。
すると笑ってくれるのでは無く、

「でもその丸刈りになった子、可愛そうですね。」

というノリの悪い反応。
なんか肩すかしをくらったような気分になったその瞬間、その丸刈りになった奴の顔をうっすら思いだし、かなり怒っていた記憶が蘇った。

「そうっすね、でも今思いだしたけどそのハゲ、結構怒ってた記憶がありますねー。今でもボクの事、恨んでるかも(笑)」

そう答えて笑いながら鏡越しに美容師を覗くと、今度は無表情で松原を見ているではないか。

「あれ?どしたんですか?」

その問いにゆっくりと彼は答える。

「覚えてません?」

急にデパートのエレベーターの中みたいに不思議な沈黙と緊張が松原にのしかかり、嫌な予感が的中する。

「そのハゲ、僕ですよ。」

さっきまで流れていた店内のBGMが聞こえなくなり美容師が耳元でこう囁く。

「ヘアスタイルはお任せで大丈夫ですか?」

120杯目 「盗撮は犯罪デス!」

目まぐるしい日進月歩で進む近代化。そこに反比例して、日本人としてのアイデンティティーが失われていくような気がして少し寂しい松原がお送りするこの大人気コラム。
横文字が氾濫し、カタカナが横行するこの社会。普及し続ける携帯電話キャリアにも原因がある。
顔を見て話す事を忘れ、メール文化へ。携帯電話を使った犯罪も増加を辿り、カメラ機能に始まり、無意味な機能がこぞって開発されこの携帯電話は果たして我々にとってプラスなのかマイナスなのか??

そんな事を考えながら東京出張で立ち寄った池袋駅。
打合せを経てこのまま神戸に帰ろうと改札に差し掛かった時!
激しい怒号が松原の鼓膜に響く。

「お前、携帯を出せ!」
「なんでだよ!離せよ!」

こんなやりとりがいきなり松原の横で行われ、男性2人が取っ組み合いをしている。
好青年な大学生風の男が華奢で如何にも根暗な男の手をひっぱり、携帯電話を奪おうとしているではないか!
何事かと思い、眺めていると行きかう通行人や野次馬が集まり2人を囲むサークルが完成。
その円の中心である2人の取っ組み合いはどんどん激しくなり、もはや華奢な彼のTシャツはヨレヨレになっていた。

「お前が盗撮してたのは見てたんだ!早くその携帯を出せ!」
「知らないって、離せよぉぉぉ」

どうやら華奢な彼は携帯で盗撮をして、それを見た好青年が捕まえようとしている事が理解出来た。
するとかなりガタイのいい男性もそのやりとりに加わり、激しく抵抗する華奢君のTシャツを掴み、振り回しだした。

柔道でもやっているのかの如く、匠みに華奢君を投げ飛ばし、羽交い絞めにし出した。
好青年君は前線から離れ、息を整えながらその攻防を見守る。
柔道君はどんどん技を決めていき、殴りはしないがダメージを華奢君に与えていく。

両者とも顔を真っ赤に、かなり興奮した様子である。
その光景に周囲の女性は悲鳴をあげ、構内はパニックに陥る。

松原はもう目が離せなくなり柔道君と一緒に華奢君を取り押さえる事にした。
華奢君は華奢なくせに火事場のクソ力で抵抗を見せ、逃げ切ろうとする。
もう何語か解らない奇声を発し続けて、ちょっと怖くなる。

そして遂に柔道君の寝技から抜け出したのだ!

慌てて松原が華奢君のTシャツを掴んだらTシャツからスルリと抜け出し、上半身裸の状態に。
しかし柔道君は体制を立て直しまた華奢君に飛び付いた!

もう凄い光景である。

柔道君のシャツもほぼボタンが外れ、両者上半身裸状態である。
こんな事を言うと不謹慎であるが「超オモシロイ光景」である。
思わずこの光景を収めたくなり、携帯電話でこの2人を撮影!

凄い写真が撮れた。

これはいい話のネタだと思った瞬間!人混みの壁から警察官数名登場し無事、華奢君はお縄となる。
好青年君が連行される華奢君に「盗撮は犯罪だぞ!」と怒りあらわに叫ぶ。

最近の青年も捨てた物じゃないと感心し、一部始終を見届る。

そして一安心で改札を潜る松原。

盗撮とは本当に許すべき行為!
相手の許可なく撮影する行為は悪であり、この携帯電話で気軽に撮影できるという事も問題である。
盗撮という不法行為について考えながら電車に乗り込み、改めて携帯に写った上半身裸の男性達の凄まじい写真を見なおす。

するとふとある不安に襲われる。

いや、そんな事は無い。

いや、…でももしかしたら。
盗撮への怒りの量だけ不安が圧し掛かり怖くなり、自問してみる事にする。

「その…この上半身ほぼ裸の男2人の写真も…盗撮になる?」
ほぼ満員で混雑した車内。

さっきまで聞こえていた雑踏は急に聞こえなくなり、好青年君の「盗撮は犯罪だぞ!」という言葉だけが松原の中で何度も繰り返される…。