77杯目「盗撮」

我が家はオービスで記念写真。松原デス。
はい!という事でホント思い出は宝物だね。
写真や映像は出来るだけ残していきたいと思う31歳の冬。
そんな松原は先日、名ばかりの出張で日本列島の北端盛岡に行って参りました。

そこは雪だらけの白銀の世界。日本昔話に登場しそうな景色はまるで意図的に日本の情緒を伝えてくれている様な錯覚にも陥る美しさ。
一泊二日の時間の無いタイトなスケジュールで初日の仕事を終え早々に眠り、翌日早朝から“秘湯”に行く事にする。
温泉好きの松原はテンション高く、地元民しか知らない天然露天温泉に向かう。

そこは明治より以前からある様な木造の小屋が入口になっていて受付があり、そこで300円を払い、中に入っていく。
本当に情緒ある歴史的な木造建築物。一面雪化粧の廊下を歩き、露天風呂に向かう。
途中食事が取れるような場所があったので先に食事を取ろうと食堂へ。
昔ながらの場所のくせに何故か食券制。
自動販売機で食券を購入したはいいが客も店員も誰もいない。

エエエ!!!そこも無人? それは完全に詐欺やん!(汗)

でも苦情を言う時間も無いので、温泉に入った後でもう一度来る事にする。
気を取り直して歩を進め、廊下の先にある温泉に辿り着く。
扉を開けるとそこは絶景。もう美しすぎて唇が言葉にならない言葉を形づくる。
谷底の吊橋の下に砂漠のオアシスの如く湯気立つ温泉。
辺りは雪一面で温泉の横には魚が泳ぐ川。
聞く所によるとココはJRのポスターになっている程の最高のロケーション!
極楽とはこの事!さっそく脱衣所を探すがそんな物は無く、本当に野生の温泉。
大興奮で衣服を脱ぎ温泉に飛び込む。コンクリートジャングルで積もったストレスを溶かす様な熱い温泉は松原の心の奥まで暖めてくれる。

許す事ならこのままココに住みたい!

そんな気持ちを抑え、10分ほどお湯を楽しみ、飛行機の出発時間に背中を押され温泉から泣く泣く上がることに。
衣服を着て、名残惜しいこの風景をi-phoneの動画で収めて帰る事にする。

くまなく隅から隅まで撮影をして思い出を凝縮しているその時!!!

急に30年間で見た事の無い物体が写りこんでくる。

まさかである…。
背中の曲がったお婆ちゃんの裸体が液晶画面一面に広がる!

なんじゃこりゃ!!!!

あまりにスッポンポンのお婆ちゃん過ぎて、この事実が脳に浸透するのに数十秒の時間を要した。
ここは混浴でお婆ちゃんが入ってきたんだ。
その物体を脳が認識すると同時に今まで発生した事の無い奇声が口では無く全身の毛穴から発せられる。

「ぬぉぉぁぁおぅっ!」

その声に反応した物体が松原を凝視。
液晶画面越しに見つめあう2人。
松原はもうパニパニパニックだ。

その瞬間!その物体から激しい口調で怒号が発せられる。

「いやぁぁ!くらぁ!おめぇ!」

とんでもない訛った声で怒鳴られ、松原は慌ててこの極楽から地獄へと変わった場所から飛び出す。
全力で走っている松原の心臓は激しく波打ち、肉眼であれば確実に失明していたであろう先程の映像が脳裏から離れない。
長い廊下を駆け抜け、ポッケにしまったi-phoneはいつもより重く感じる。
一体あの映像は何メガの容量なのだろうか…。
そしてなんとか受付まで辿り着くが、なんと後ろからさっきの物体が簡易な衣服を纏った状態で追いかけてきた。

ギャーー!!

そして松原を指差し「こやつがカメラで裸を撮ってたんや!」と叫んできた。

それを受け、受付に居たお爺さんが立ち上がり怒りを露にして
万事休すの松原に向かって激しく怒鳴ってくる!

「くらぁ、ばぁば、また仕事中に温泉入っとったんか!?」

怒鳴られた松原は遂に盗撮で捕まってしま…

ってエエエ!!“ばぁば”????
松原じゃなくて婆さん??????
婆さんに怒ってるやん!!
しかもこの婆さんここの従業員なんかい!

事態が把握出来ずアタフタしてると、受付の爺さんは婆さんに仕事をサボるなと説教を始める。
そして説教が終わり、婆さんは渋々持ち場の食堂に連れて行かれる。

ってちょっと待て!ゴラァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

さっき行っておらんかった食堂の奴はお前やったんかい!
このババァ!

んでごっつい映像見てもたから全く食欲無くなったわ!
どーしてくれんねん!
仮に食欲あってもあのババァの待つ食堂行き辛いわ!!
この食券とこの気持ちはどうしたらエエねん!最悪やっ!

しかもこのババァが公の人間やったら
「お食事券」と「汚職事件」を引っ掛けて落とせてたのに!

チッキショー!!!

あんまり温泉に浸かれんかったけど、めっちゃ疲れたわ!ボケェ!

*注)i-phoneの動画は帰りの空港のゲートで探知機に反応してしまったのですぐ削除しました。

-2011/04/10 update-