135杯目 「矛盾したすべらない話」

「死んだらぶっ殺す!」
「座って立ち読み禁止」
「健康の為なら死ねる!」
「男に二言は無い。もう一度言う。男に二言は無い。」
「韓国料理 日本」

 

などこういった矛盾した言葉はいくらでもある。
そして脳内で「どっちやねーん!」と突っ込む事で笑いが生まれる。
そう、笑いと言えば先日、神戸のとある野外広場を活用したイベントのお話を頂いた。

 

あまり知られていない広場をPRする企画を考えて欲しいと言う事で、ライブを単純にするよりもトークが面白いバンドマンを集めて「すべらない話」をする事になった。
もちろんMr.すべらない話・ユタカ マツバラも参戦し、全12名のミュージシャンが集結した。

 

内容は至ってシンプル。

サイコロを振って自分の名前が出たら「すべらない話」をするだけ。

どこかのテレビ番組のアレである。
そして全員がとっておきのすべらない話をそれぞれ持ち寄って迎えた当日。

晴天に恵まれ野外ステージに沢山のお客様が集っていた。

しかし天候とは違って出演者の顔色は曇っている。それは出演OKしたものの、やっぱり直前になると緊張が襲ってくるのである。いつもならライブ中にある曲間のMCでスベっても「曲」に入って空気を変えれた訳だが今回はそれが出来ない。これは冷静に考えてみると演者にとって相当の恐怖である。
中には中止させる為に「雨乞いをした」と言うチキン野郎もいるぐらいである。

 

でも気持ちも解らないでもない。

 

 

改めてお笑い芸人の凄さを感じざる得ない。
しかし時間というのはこちらの都合など関係なく迫り来る訳で全2時間のすべらない話の火蓋は定刻通りに切られる。

 

しかしさすがは腕に覚えのあるミュージシャンたち!軽く躓く人はいつつも、全く誰もスベらずに笑いがフィーバー中のパチンコ玉の様にどんどん飛び出し続けて予定より15分も押してエンディングトークへと突入する。

施設の人も常に笑っていて企画者として松原は成功を噛み締めていた。
しかし少しだけ消化不良な事があった。

 

 

それは何と一回もサイコロで松原の目が出た事が無いのだ!

そんな凄い確率ある??

 

 

 

人生で一回も二千円札を持った事が無いまま死ぬぐらいの確率である。
でもちょっとホっとしている自分もいる事は確か。
司会も務めていたので喋った量は充分だし、時間も押してしまったので、このままイベントを締めようとした瞬間!

 

 

どの角度から観察しても悪意に染まった一言が出演者から飛び出る。

 

 

 

 

「え!松原、一回も喋ってないやん!」(会場が騒つく)
「最後に1つ喋って終わろうやー!さぞかし面白いんやろーなー!みんないいよね?」(会場から拍手が起こる)

 

 

 

もし松原の目からビームが出るのなら即こいつを八つ裂きにしている。
最悪のフリである。
しかしもう逃げれない状況となり、ここはめっちゃ短いすべらない話をバチコーンと決めたら超カッコいいと長年の経験から判断する。
施設の方も時計を見て時間を気にしているし、絶対その方がいい!
慌てて脳内で用意してたすべらない話を短くカットしオチだけを整理して組み立てる。

 

 

すべらない話とは構成が大事である。フリがどう活きてるか、間が効果的に使えるかなど松原クラスになると緻密な計算の元で組み立てられている。
しかしオチがしっかりしていれば多少組み立てを変えても大丈夫なはず。逆にどれだけ短くオチに辿り着くかもとても面白さに影響してくる。

 

 

とにかく松原は瞬時にすべらない話を構成して、満を辞して世に放った!

 

 

 

 

「いやー、こないだトイレに行ったら隣で酔っ払いのおっさんが凄い焦ってたんですよ。あまり気にせず横の便器で小便をしてたら隣のおっさんがズボンのチャックに両手を突っ込んでこう言ってたんです。

“あれ?ねえぞ、どこ行った!あれ~?”

…って無い事ないやろ!ちゃんと探せ!」

 

 

 

 

 

 

初めてこの会場で“風の音”が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分でも自信のあるスベらない話。酔っ払ったおっさんがトイレをしようとしてナニを出そうとしたら酔っ払ってるのか、ナニが見つからず「どこに行った?」とひとりごとを言うというオチ。

 

 

鳴り止まない笑い声を想像して居たが…
なんと!!!!!!!!
信じられぐらいスベったのだ!

 

 

体の弱い人なら絶対ショック死するぐらいのスベりよう。

 

 

 

自己分析をすると時間が無い事などに焦りまくり、言葉も早口で聞き取り難く、元々2分ぐらいある話を10秒に縮め、組み立てや流れが崩れてスベったのだと推測される。

 

 

しかし会場の無反応さにスベった事が一瞬分からず、遅れて理解した時にはもうどれぐらいの時間が過ぎたか解らない。

 

慌てて、「ではみなさんまたの機会に!」と締めてBGMで逃げる。

 

 

 

立ち直れないぐらいの衝撃に出演者や施設の方々に合わす顔が無い…。
終わった…。

 

しかし、全て失った訳では無い。
これで1つ生まれたのだ。

 

 

 

 

 

「すべらない話でスベったと言うすべらない話」が。

-2017/05/27 update-