138杯目 「見た事無い雑誌のインタビュー」

最近の悩みと言えば、どんなに面白い事があってもネットの普及によってこのコラムで書けない事が続出している事である。
オモシロくお話を描く為には誰かを不快な思いにさせる表現になる可能性がある訳です。それでもしその当人がこのコラムを見る事になって傷ついたり怒ったりする可能性があると思うと書きたくても書けない葛藤に襲われる。
そんなネットの普及により手に入れた便利の代償に住みにくい世の中となった昨今、今回のお話は【見たことの無い雑誌】のインタビューを受けた時の事です。

全く聞いた事の無い雑誌だったが30 分程度でいいと言う事なのと電話で話した担当者が好感の持てる青年だったので快く引き受ける事にした。

取材日当日、約束の時間丁度にインタビュアーと担当者の2名が事務所へやってきた。取材内容は松原の仕事について。簡単な説明を受けてから、取材が始まるという瞬間!インタビュアーがあたふたしている。

担当者が小声で「どうしたん?始めるで?」と少し苛立ってインタビュアーに迫った。
「いや、違うんです。テープレコーダーの容量がいっぱいで…」インタビュアーsay。
「だから会社出る時に全部消してって言ったたん。」
「いや、消したはずなんです。。でも何か残ってて…」
「いや〜松原さん、すみません。ちょっとお待ちくださいね。」

担当者が笑顔で松原に謝罪する。
別にこれぐらいで怒る程、器は小さくない。

「全然大丈夫ですよ〜!」

松原は大人の笑顔で優しく答える。

そこからは彼らのやりとりが続く。

「あれ?削除してるのにデータが消えないんですよ…」
「なんでなん!?そんな訳ないでしょ。貸して!」

担当者はレコーダーを奪って液晶画面を操作するが、
「あれ?ほんまや。消えない…なんで。」
「でしょ?消えないんですよ。」
「だったらもう1個のレコーダーでやろう。持って来てるやんな?」
「はい。そうしましょうか。」

そして別のレコーダーを鞄から取り出すして電源を入れるインタビュアー。
「あれ?電源が入らない。。。」
「もう!なんで?貸して!」
担当者もさっきまでの笑顔は完全に消えてイライラが顔からこぼれ出る。

「ちょっと!これ電池が無いんじゃない?」
「いや、電池変えてきましたよ!」
「電源が入らないって事は電池しか原因ないやんけ!」
「だから会社出る時に2つとも電池を変えたのでそんな事は無いです!」

…もう完全に松原の存在を忘れ、喧嘩腰のやりとりである。
その場にいる松原は気まずさに包まれる。

「ちょっとさっきのレコーダー貸して!この電池を抜いて使ってみて!」
「いや、だからそんな訳ないですって!」

言い返すインタビュアーを無視して担当者が電池を入れ替える。

するとレコーダーの電源が見事にON になる。

「ほら!入ったやんけ!全然さっきから俺が言った事、出来てないやん!」
「いや、僕は絶対データ削除しましたし、電池を変えましたって!」
「実際に消えてないし、電池が切れてるやんけ!言い訳するな!」

担当者の怒りはピークを迎え、そして「松原さん、すみません。それではインタビューを始めさせて頂きますね。」と引きつったスマイルで話しかけてくる。

いやいや、この空気でインタビュー出来るか〜!ほんでインタビュアーも完全にすねてるし、変な空気出てるやん!マジで何なん、この取材!挙句の果てに「今ので10 分ぐらい時間が経ってしまったので20 分で取材を終わらせますのでご安心ください!」いやいや、やるならちゃんとしてー!ほんでインタビュアーも全然テンションOFF やから電池と一緒にこいつも変えてください!!(>_<)

 

-2017/07/23 update-