97杯目「押しの強い男」

今回は友人のモテない男30歳の悲しい話をするよ。
10代前半の果敢な青春時代にバスタードという少年誌なのに女体登場頻度エロ本クラスのけしからんけど最高の漫画を寝そべりながら読んでいた彼。

その時!

初めて感じた湧き出る熱い思い。
当然ながら健全な男性であれば体の一部がホットホットな訳で、悶々とした気持ちが体内から溢れ落ちる。
この溢れ出す性欲というリビドーを制圧する事を彼は本能的に察し、
うつ伏せで寝そべっていた状態のまま不覚にも畳に彼のシンボルをこすりつけた。

時刻は夕方。
夕日を浴びて町がオレンジ色に染まった頃、彼の頬も赤く染まりながら生まれて初めての絶頂オーガニズムに辿り着いたのだ。

「な、なんて気持ちいいんだ!」

まるで自分の体が空へ上がり、破裂し、光り、点滅の尾を引き、落下し、空に溶けて消えるような感覚。
それから彼はこの絶頂を狂った猿の様に追い求める事となり、
寝ても覚めてもうつ伏せで下半身を床にこすり付け続けた。

これが自慰行為という名称がある事も知らずに床が変色しても、気にせずこすり続けた。

そして10代という果敢な青春の時間を全て床に愛情を注ぐことになった。

旧約聖書にも登場するこの自慰行為は心理学の見地からでも
“自らの手を汚しながら人間が人間である事を確認する行為である。“
と言われ自我の形成に重要な役割を果たしているらしい。
なので決して恥じるべき行為ではないのだが、
この行為を自らのみが手に入れた神のみぞ知る快楽と勝手に思い込んでしまい思春期も友人と自慰行為について語り合う事も無く、
バレたくない思いで心を閉ざして俗世との関係をなるべくして遮断し続け、
遂に30歳まで「床にこすりつける」スタイルで性処理を行ってしまっていたのだ。

ノーマルスタイルを知らないそんな彼がついに先日奇跡的に彼女が出来たのだ!
神から与えられた男の存在意義が遂に活かせられるのだ!!
これは松原も喜び祝った。

しかし!神はやはり彼を見捨てた。。

ある日、「もう我慢できない!あんたおかしいから!もう別れる!」

そう叫んで飛び出した彼女。完全に彼に原因がある事は間違いない。
しかし無二無臭な性格の彼。

なぜ別れたのか松原は彼に事細かく聞き出した。
すると!嗚呼…事態は壮絶。悲しきかな人間のサガ。
理由は冒頭で話した彼の自慰行為にあったのだ。
日々蓄積される経験に反応する順応性が凶と出た彼はオーガニズムを圧迫でしか得る事が出来なくなっていたのだ。
要するにピストン運動では無く、圧迫なのだ!
何かに押さえつけて締め付けられないと感じる事が出来ない体になってしまっていたのだ。

なので世間が認知する性行為とは完全に一風変わってしまう。
そう!押すのみである!引きが無いのだ!オスだけに押すだけなのだ。

要するに挿入したら最後そこからは押し続けるのみ!
なので彼の性行為のエンディングは部屋の隅っこに彼女を追いやり壁に押し続けてフィニッシュ…
衝撃の事態。

最初の方は「おかしいな…」と思っていた彼女も毎回壁に押し付けられ、
背中にはアザも出来、いよいよ我慢の限界に達し、彼に言い放つ!

「もう我慢できない!前々から言おうと思ったけどあんたのSEXおかしいからっ!」

引く事をしなかった彼は遂に彼女が引くぐらい押し続けたのだ。
以後彼は押しに強い女性を探している。

-2012/12/03 update-