87杯目「パウダーの夜」

こないだニュース見てたらバファリン製造工場が爆発したんだってね。
優しさも半径数㎞に渡り飛び散ったら怖いね。ハハハ。
痛快つかみネタから始まりました大人気コラム!
半分は優しさで出来ている松原ですが先日出張に出かけた時の事です。
ホテルを探しキャリーバックを転がしながら東京の夜を歩いていると呼び込みのお兄ちゃんが突然、声をかけてきた。
警戒心全開で振り向くと「どこから旅行ですか?」兄ちゃんsay。
「いや、神戸から出張で…」答え終わる前に
「ええ!神戸なんですか!ボクも神戸に住んでたんですよ!うわー!うれしいな~!」
興奮した兄ちゃんが松原に飛びついてきた。

神戸という言葉に嬉しくなる。

「どこに住んでたんですか?」
「えっと、なんだっけ?海から近いところ…えっと…」
「神戸駅?」
「そう!!神戸駅の周辺に住んでたんですよ!」
「へー!ぼくも近いですよ」

ますます親近感が湧く。

「神戸はきれいで好きなんです~」
神戸好きに悪い奴はいない!
「そうですよね~!でもなんで東京に?」
「いや、仕事を探して東京に来てマッサージの呼び込みをしてるんですが今日、全くお客さんが来てくれなくてクビになりそうなんです。。」

それは可愛そうである。

「どんなマッサージ?」

「これが新しいマッサージでうんだらこうたら…」
「へー。いくら?」
「3000円です!」
「意外と安いね。じゃ~行こうかな。。」
「まじですか!ありがとうございます!ホント神戸の人は優しくて大好きです!」

人助けだと思い流れでマッサージへ。
案内されたビルのエレベーターの中で3000円を兄ちゃんに渡し、至極の表情で感謝される。
そして4Fで降りると無茶苦茶怪しい暗い部屋が目の前に広がる。
そこはカーテンで仕切られたベットが4つぐらい並ぶ空間。

「え?ここ?」

不安に駆られて兄ちゃんに聞くとどうぞ中へとベットに案内され
「ごゆっくり」と言葉を落として戻って行った。

すぐさまオバサンがやってきた。

「じゃーこのパンツに着替えて服は全部脱いでこの籠に入れてください。」say。

えええ!なんで訳わからん青いブリーフを履かなあかんの!?まじで?

「な、なんでですか、コレ?」

抗議に似たテンションで訴えようと顔をあげるともうカーテンは閉まっていてオバサンの姿は見えない。

「まじでか…」

憂鬱になりながら裸に青いブリーフを履いてオバサンを待つ事に。。
ものの数分でオバハンがやってきて松原を寝転ぶように指示する。
横たわり恐怖で震えそうな体を意識的に固定し、緊張のままうつ伏せになるとオバサンが桶に入った白い粉を松原の全身に塗りだしてきた。。

「ちょ!!な、なにしてるんですか!?」

熱湯をかけられたお笑い芸人バリに飛び起きてババアに問う!

「え?パウダーですよ。」

なんや、パウダーか~

…ってなるかーアホ!
だから何のパウダーやねん!
この謎な空間への恐怖がこのパウダーで爆発してしまい一刻も早く脱出したくなる。

するとババアは「6000円のパウダーになります。」say。

ちょっと待てゴラァ!さっき兄ちゃんに3000円払ったわ!

「え?どの兄ちゃん?」
「呼び込みの兄ちゃんや!」
「あー。あの人はうちの店と関係ないよ」

キャーーー||||||||||||||(* ̄ロ ̄)||||||||||||||||

ま、まさか!だ、騙された!?

「とにかく6000円払ってくれないと服返さないよ」

うわああああ!まじで最悪の状況である。
信じた兄ちゃんに裏切られ、訳わからんババアに粉まみれにされた上に青いブリーフの男が今、お金をボラれている。
人間の想像力は無限大と誰かが言っていたが、この状況を想像出来る人間が一体世界に何人いるだろうか?

「とにかく服を返せ!」

ブチギレた松原が怒鳴りつけると、ババアが壁についているボタンを押そうとした。
ちょ!!イヤイヤイヤイヤ!!!
は、払う!払う!でも何?そのボタン。こわ。。
泣きながら6000円で自分の服を取り返し、慌ててこの空間から脱出する。

エレベーターから降りたった瞬間、さっきの兄ちゃんが100mぐらい離れた所からこっちに気づき走って逃げ出す。

「グラァァァァ!!」

叫びながら兄ちゃんを追いかける。
逃げる兄ちゃん。
追いかける松原。
走る兄ちゃん。
パウダーでカサカサする松原。
見えなくなる兄ちゃん。
服の間から白い粉を撒きながら失速する松原。
もう何も考える気力を失い、ホテルに泊まるお金も無くなり、
大衆サウナに泊まる事にする。
どうにか気分を変えたくて風呂に入ろうとすると脱衣所で4,5人組の若い男達が松原を見て笑い出す!

「ゴアー!何見とんねん!」

もう頭に来て怒鳴りつける。
すぐに我に返り周囲を見渡すと上半身が真っ白な男が鏡に映っていた。
9000円の白い粉を泣きながらシャワーで流すと“優しさ”も一緒に流れ落ちた。
モウダレモシンジナイ…。

-2012/02/27 update-