27杯目 「笑いのツボと割れたツボ」

現在、トチ狂って自分の名前を起用した周年イベント「松原祭40連発」が開催中だが、毎日毎日打ち上げの日々の中で曜日感覚を失い、今日がいつかもわからず「起きる→出勤→打ち上げ→寝る→起きる。」の繰り返し。

 

そんな日々の中で唯一の苦痛であり、楽しみであるこの「打ち上げ」。
全国的に悪い評判から好評までクッキリ差が出る激しい打ち上げは年間300日ほどはある。
本当に色々な思い出がある打ち上げ。
そしてその打ち上げで酔っ払い我がを見失った奴は色々な事件を起す。

 

今日はそのインパクトがあった打ち上げ後のアザーストーリーを紹介しよう。

とある日、打ち上げが終わり、打ち上げに参加してたバンドマンと彼女のカップルがラブホテルへ宿泊しに行った。

打ち上げでベロベロに酔った我々は、悪ノリと悔しさで「僕らはラブホテルに泊まるので」と言って去る二人の後を着けて行く事にする。もちろん尾行には気づかれず、ついにホテルに到着。ここで普通は帰るのだが酔っ払った打ち上げスタッフ風次(仮名)はホフク前進でロビーをくぐり抜け、何故か室内への侵入する事に成功したのだ。
どんだけこのカップルもベロベロやねん。とにかく奇跡的に気付かれずに侵入し、クローゼットの中から一部始終を我々に携帯電話を使って、報告してきた。

 

酔っ払ってる我々は笑いのツボにハマり、大爆笑。その報告を受けながら全員でコンビニ前でヤンキー飲みをすることにした。

缶ビールとスルメを駐車場の車輪止めの上に座り、飲んでいたら一人の泥酔した某バンドVoがフラフラと小便する場所を探す旅に出かけた。我々はラブホテルの実況中継に夢中になっていたのであまり気にも止めなかったが、そのバンドのギターリストが「あいつ酔っ払うと何するか解らないので」と不安がり、後を付いて行った。

 

彼らの姿が見えなくなり、気にせず飲み続ける事、数十分。
松原の携帯にさっき追いかけていったギターの奴から着信が入る。

 

「松原さん!大変や!Voがヤクザの組の前で立ち小便をしようとして玄関の壷を割ってしまって事務所に連れて行かれた!!!!」

 

 

あまりにもギャクマンガみたいな出来すぎた展開に松原はもう一度書き直すが、やはり内容は同じ。ヤクザに連れて行かれたとのこと。

 

「どうしたらいいでしょうか?たいへ… プープープー」

 

 

えええええ!

 

 

言葉の途中で電波が途絶えた。

 

 

 

「もしもし!おい!もしもし!!」

 

 

 

 

松原の声は相手の居ない携帯電話に虚しくこだます… とにかく大変な事態だ。
コールバックするが、圏外。感情の無い自動音声の声が答える。
急いで近隣をみんなで走り回り探すが見つからない。残された手がかりは玄関で割れた壷のみ。手がかり薄っ!!

 

住宅地の中でコレを探すのは広いプールに落ちた指輪を探すのと等しい。

 

途方にくれ警察に電話をかける。数分後サイレンと共に赤いランプが酔いの覚めた松原たちの顔を照らす。
事情を説明したあと、パトカーに乗り込み、警察官の知るヤクザの組を回る。
組長の射殺が報道を騒がした記憶に新しいヤクザの町・神戸だけに警察官は効率よく組を回る。
しかし中々見つからず諦めかけた瞬間、陶器の破片が散らばる1件の建物がフロントガラス越しに目に入る。

 

 

「ここだ!」

 

 

慌てて、車を停め、警察官は動じず防犯カメラが忙しく監視する玄関のチャイムを鳴らす。
丸狩りに等しいヘアースタイルの数人が眉間にシワを寄せ扉を開ける。
すかさず警察官が

「ここに20代前後の男の子が来たと思うのだが知らへんか?」

と問うと

「おー!壷割った子やろ?免許書預かって明日弁償しに来い言うて帰らしたわ。」

先頭に居た、まるで派手な衣服を着ているような上半身裸の男が答える。

「ホンマに帰らしたんか?」

「帰らしたで。」

同じ様な質問が警察とヤクザの間で繰り返すが、 話合いに負けたのは警察の方だった…・

「なんで踏み込まないんですか?絶対居ますよ!」

少しきついイントネーションで松原は警察に問うが

「実際証拠が無いと家宅侵入は出来んのや。」

「僕には解るんです!絶対居ますよ!僕、勘はいいんです!」

 

 

しかし訴えも空しく、我々は遠くなるパトカーを後目に日が昇るまで周辺を探す。
が、見つからず絶望の気持ちでライブハウスの事務所に戻る。するとすると驚愕の結幕を知らせる電話が鳴る。

 

まさかの消息を絶ったギターの奴からだ!
慌てて電話に出ると、
なんと彼は充電が切れて機材車に戻り、充電しながら寝てしまったのだ…!

 

 

エエエエエエエーーーーーーーーー!!!!!!

そして横にボーカルの奴も寝ている事を聞かされた。
コラーーー!どんだけ我ら探し回っとたんじゃ!あほー!

「あのあと大変やってんぞ!」松原は安心した分だけ怒りがこみ上げ、彼らに怒鳴りつける。

「え!?あのあとですか?どうなったんですか?」ギターの奴が興味津々で返答してくるので呆れて物も言えない。「早く教えてくださいよ!あの後、ラブホテルの風次さんは、どうなったんですか?」

 

 
あ、それ忘れてた。

-2006/09/05 update-