111杯目 「無感情」

どうも!20世紀最後の置き土産・松原の大人気コラム111杯目がやってまいりました。
このコラムで使用している「杯目」という単位は当初打ち上げで起こったお酒に纏わる面白話を中心に展開する予定でしたが、大半は全然お酒と関係無い話ばっかりw。
原点に戻り今回は打ち上げの話デス。

先日太陽と虎の近くの激安居酒屋にバンドマンを引き連れて乗り込んだのですが、
飲み放題という事もあり焼酎ロックイッキ大会から“フジ○ックに肩を並べる”イッキフェスへと進化。
もう全員ベロベロで呂律は回らない所か直立不動状態。
松原も悪原へと駒を進め“イケイケ状態”に。
ふと気がつくと隣の席に移動したあるバンドマンがスタンディングゲロゲーロを実行。
全員で一斉に「やめろー!」と叫んだが時すでに遅し。
その声に反応した店長(らしき奴)が飛んで来て、“喉がカラカラで急いでストローで飲んだオレンジジュースのグラスの如く”顔の赤みが引いていく。
「ちょっと!これは困ります!全員で掃除してください!」
言い方にトゲがあり、完全に自業自得の我々はムっとしてしまう。

『そんな言い方せんでもいいっすやん!』

血の気の多いバンドマンが噛み付く。
「周りのお客様にもご迷惑がかかりますので!」
言い返す店長も強気である。

急いで周りの席を見渡すとヨボヨボのおっさんが一人で酒を飲んでるだけでは無いか。
松原もこの戦いに参戦すべくそのおじさんに喋りかける。

『ここにゲロがあっても別に迷惑じゃないですよねー?』

しかしおじさんは感情を家に忘れて来たかの様な無表情で松原を見て頷く。
曇りなき怪しさだが、肯定してくれたので店長に『ほら!ね?』と応戦。
すると店長は「ちょっと!関係無いお客様に話かけられては困ります。」say。
『関係無くないよ!知り合いだもんねー?』とおじさんに喋りかけるとまた感情無く頷く…。

こいつなんかヤバい。

そう五感が松原に耳打つが余計興味が湧き、店長を追い払い、隣に座って少し話を聞いてみる事にする。
しかし全然リアクションが無いので瞬間で飽きてしまい皆の席に戻り、また盛大な打ち上げに勤しむ。
そんなおじさんの事を忘れるぐらい盛り上がり飲み放題の2時間も終わり、そろそろ帰ろうとレジに向かう瞬間!入口から警察官がゾロゾロと突入してきた。

うわー!!酒臭い驚きと恐怖が溢れると同時に警察官がさっきのおっさんの所に集まり囲みだした!な、なにごと!?
我々はイッキに酔いも覚め、さっきまでの“盛況”は“静寂”に場所を譲っていた。
そして警察官は怒号を飛ばす!

「おっさん!またあんたか!何度目や!無銭飲食!」

えーーー!じ、自分、金持ってない人やったん!?まじかよー!
「店長さん、この方は何時に来て、何を食べましたか?最初から詳しく聞かせてください。」
どうやら店長の通報で警察は駆けつけたようでおっさんの入店から今までの経緯の説明を求めている。
店長は怒りをあらわに説明し、その中で松原を指差し「彼は知り合いのようです。」

いやいや~ちゃうやーん!知ってるやん。
ごめんってーーー!仕返しせんといてってー!

必死で謝り、バンドマンのみんなにも弁護に入ってもらい何とか知り合いという誤解を解き、開放され居酒屋の外へ。
危なく知らんおっさんを奢らされる所だった。
外ではパトカー数台と留守番の警察官数名。
完全に袋の鼠のあのおっさん。
五感が告げた怪しさは的中だったのだ。

そしてあの無表情には感情どころか勘定さえ無かったのだ…。

-2014/01/30 update-