109杯目 「松原 裕の30分間」

駅の売店にて。
売店員が「お茶はこの“おーい!お茶”でいいですか?」
っておばあちゃんに聞いたら
「え。いや、ワタシは少ない方でいいです!」
って慌てて答えてたよ!

絶好調松原のコラムが痛快に始まりましたが今回は先日、
超リスペクトしているBBQ CHICKENS(※1)というバンドのライブに松原をブッキングされた悪夢を振り返りたいと思います。

とある日に一本の電話が鳴る。

「10/24って何してる?」

意味が分からず空いてると伝えると
「梅田クアトロでライブするからその日に30分あげるからピンで出演してー。しかも2マン(※2)で!」
喉仏が裏返るぐらい「え?」と叫ぶ。
これは完全に悪意のある嫌がらせである。
だってご存知、松原は「曲」を持っていない。
先方ももちろんそれを認識している。

ここで生まれる疑問。

そう。

“30分何するねん”である。

もちろん当事者である松原はみなさんより前ノメリで思う訳で…それを尋ねると
「何してもいいよ。」との事。
でもそれは選択肢があるようで無い、まるで塀の中の自由。
“喋る”以外無いのだ!

しかし松原は今まで様々な修羅場をくぐって来た。
自信しか無い!ビビってると思われたら終わりだ。
「やってやろうやないか!」と余裕でOKを出す。
が、一向に何をしたらいいか解らず現実逃避を続ける3週間。
しかしこちらの都合など無視して時間は勝手に進む。

遂に開催1週間前と迫った時、松原の精神は追い込まれる。
不安で1時間置きに目覚め寝れず、しゃべるネタも思いつかない。
先方は悪ふざけ大好きなイダズラっ子。
スマートな笑いは求めてないはず。
でも楽屋ウケだけを狙う奇抜なボケだと観客は置いてけぼり。
松原は一体誰に向かって笑いと取りにいけばいいのか解らない“不のループ”に陥る。
正解の見えない持ち時間30分を探し、樹海に迷い込む日々。
精神は崩壊し、電車に乗ると全員がこっちを見ている錯覚に陥る。
尊敬し、憧れて、バンドを始めるきっかけのロックレジェンドの前で松原は何かを喋る。
しかしこれ…スベってしまったらせっかくゆっくり登っている音楽業界の坂から一気にスベり落ちるという事になる。

なんというリスク。

あの時、OKした自分をボコボコにしたい。
しかも700人収容の会場は即完売の後で、松原の出演が発表される。
チケット購入者からは「誰だよ!こいつ!」状態である。
そして体重も落ち、迎えた恐怖の当日。
欝状態だが元気よく楽屋に入って挨拶する。

が、そっちが呼んだくせに何故かウエルカムな空気が無い。

そして夜のホステス嬢の香水ばりに悪意が臭う「今日は期待してるで!」の言葉が松原をまた追い込む。もうこの世には敵しかいない。
楽屋もシャワー室の前の1畳の脱衣所を与えられる。
そして本番を迎え、人生で初めて足が震えてまっすぐ歩けない緊張状態。
つかみのオープニング映像(その為に2万円のプロジェクターをレンタルw)は何とか盛り上がり、勇気を振り絞り登場!
30分間しゃべりまくる!
ピンネタを披露し、最後は客席に赤白帽を投げ込んで騎馬戦!
なんか思てたんとちゃう感じになりながらも、結果オーライでなんとか盛り上がって終了。
これでようやく開放され安堵を噛み締めたが、彼らは人の仮面を被った悪魔。
BBQ CHICKENSのライブを見ているといきなり笑ってはいけないの「ジャジャーン、松原アウト」が流れてステージに上げられタイキック数回。
松原帰れコールなど様々な嫌がらせが続行され衰弱。
イベント後も激しく打ち上げ。ようやく泣きながら朝方、帰宅。
ここまで来たら誰も嫌がらせはしてこない!
遂に掴んだ安心感。
布団に入り、一応今日のお礼をつぶやこうと思いtwitterを見たら
BBQ関係者が松原のスベったピンネタ台本をこっそり撮影していてその台本を投稿&拡散の辱め攻撃。気の小さい松原はその投稿に対する反応を5分置きにチェックせざる得ない精神状態に陥る。
もう地球上で松原の休息は存在しない…

(※1)憧れのHI-STANDARD横山健さん率いるバンド

-2014/01/04 update-