110杯目 「最高の賞状」

毎年命懸けで行っているCOMIN’KOBE(カミングコウベ)というイベントが平成25年度神戸市文化奨励賞という賞を受賞しましたのです。

なにそれ、おいしいの?
うううん。
これは食べれないのよ。
これは凄い賞なんだよ。

ある日、突然神戸市の方からの電話でこの受賞を聞く。
「なにそれ?おいしいの?」
そう口から溢れるのを我慢し、とりあえず過剰な喜びを伝え、急いで検索する。
すると“文化活動において新進気鋭で特に将来において期待される個人及び団体を奨励するため贈呈される賞”という事。
結局ピンとこないがなんかすごそうである。

しかもその授賞式があるという事を知る。
日々面白を考えている松原としては

「行かないで辞退する」と「行ってボケる」

の狭間を右往左往し、
最終的に「行ってボケる」のレールを走ってみる事にする。

バンドマンからも「何かやらかしてくれるんでしょ?」と期待され、
ロック代表として何か傷跡を残さないといけない謎の使命感が湧き出てくる。

そしてその授賞式の日を迎える。

指定された場所に行くと神戸にこんな所あったの?
と驚く立派な建物で窓は一面ガラス張りな上に日本庭園が視界を覆い尽くす絶景。
案内された席に座ると前方は金張り舞台で後ろは沢山の報道記者とカメラ。
そして周りの席には袴姿や着物姿のいかにもすごそうな受賞者たち。
一方松原はノーネクタイでロン毛。
松原を見る全ての人の「誰これ?」が毛穴から粒子となり会場の空気に溶け込む。
注目されてなんかおいしいw。
もっと目立ちたい松原は“ネクタイ”もフザけた“うんこ柄ネクタイ”を持参。
タイミングを見計らって装着するつもりだ!
他にも色々ボケグッズはカバンに仕込んでいる。

そしていよいよ開始のアナウンスが流れる。
初っ端はなんか凄い肩書きのマリンバ奏者が登場。
15分ほどお祝いの演奏を見させられる。
ボケを考えながら退屈とにらめっこをしていると当然!

「ハックション!」

静寂に広がるマリンバの音をかき消すクシャミがこだましたのだ!

一斉に会場のみんなが松原の斜め向かいのおじさんを玉視。
悪びれる事の無いその袴のおじさんは鼻をすすりながらマリンバの演奏を聴いている。
脳内は焦りでいっぱいのはずだ。
注目をおじさんに集められてしまい何か目立つ事をしたい松原は悔しい思いでいっぱいになる。
もっと目立つ事は…
「そうだ!マリンバの演奏が終わったら勢いよくスタンディングオベーションだ!」
名案に心躍らせマリンバが終わるタイミングを待つ。

そして時が来た。

ようやく演奏が終わり、松原が席を立とうと思った瞬間…

「ハックション!」

またもやおじさんに邪魔されてしまう。
もうわざととしか思えない。
不機嫌な顔のマリンバ奏者よりイラつく松原を尻目に場面は一人づつ前に呼び出されて賞状をもらうコーナーに突入。
松原は仕込んでいた“うんこネクタイ”をポケットにしまう。
前に出た瞬間に用意した言葉をつぶやき装着し、ボケを連発する段取りだ。
しかしその間も定期的にくしゃみおじさんは「ハックション!」を放流する。
もう邪魔されたくないと意気込む松原を遂に司会者が呼び出す。
前にゆっくりと歩を進める。くしゃみは来ない。
よし!今だ!

「すみません!さすがにネクタイ無いとダメですよね?持って来たのでつけますね!」
と取り出そうとした瞬間!
司会者が松原の手を抑えて
「いや、このままの方が新進気鋭なプロデューサーっぽくて良いですよ!」say。

イヤーー!!ボケ潰さんといいてー!
慌てて言い返そうとした瞬間、「ハックション!」
おじさんの援護射撃が松原を襲う。
その後もクシャミに邪魔され他のボケグッズも使えず、
どうする事も出来無いまま普通に受賞してしまう。

チキショーー!全然おいしくない…。
おい!じじい!ここにあるのは最高の賞状やけど、
お前だけは最悪の症状じゃ!

-2014/01/29 update-