119杯目 「戦後最大の事務所大混乱」
昨今、我々が住む地球は近代化が進み自然との触れ合いなど皆無に近い時間が流れている。
もう我々の祖先が住んだ世界とはかけ離れたものであり、
そんな便利を手に入れた我々は、その変わりに困難な地球規模の課題に直面しています。
環境破壊、人権侵害、感染症など書ききれない問題を抱えている訳です。
そんな松原が住む神戸…
いや、働くこの太陽と虎の事務所にて、遂に生死に関わる地球規模の問題が発生したのです。
そうそれはとある夜。
いつもの様に事務所でスタッフ数名はデスクワークを行っていた。
夕食も終え、業務も佳境な確か21時ごろ。
熱心に仕事に励む我々の事務所ではキーボードを叩く音だけが忙しく空間を駆け回っている。
そこに突然!
「ギャヤヤヤァァァアァ」
デスクの女史が入社以来、聞いた事の無い声で叫びだした。
事務所内のスタッフは慌てて彼女に視線を移すと、
まるで絵具を被った様に真っ青な顔で逃げ回りながらこう叫んだ!
「む、ムカデ!!!」
そのキーワードに全スタッフは血の気が引く。
そして松原は哺乳類以外の存在を一切認めていないのでムカデなんていう節足動物は爪楊枝を取り出した後の爪楊枝の袋より価値が無い!
慌ててソファーの上へ避難する。
しかしデスクの彼女の近くに居た数名のスタッフはその姿を目撃する。
気持ち悪さにみなが叫び、恐れる。
なんと体長10cmは優にある巨大ムカデらしい。
「うわー!」「デカッ!」「ギャァァ」
叫び声が事務所内のあらゆる所から飛び交い、
戦後一番の大混乱がまさかこの事務所で起こっている。
そしてそのムカデは我々の集合したテーブルの下へ逃げて見えなくなる。
ここからがとんでもない恐怖との戦いの始まりだ。
姿は発見出来ないが確実にこの事務所に奴はいる。
事務所内の構造は部屋の真ん中に8個のテーブルが向かい合ってレイアウトされているのでその下に隠れたという事は外に出る事は不可能なのだ。
カオスを化した社内。
まずはこのムカデがどんな奴なのかをネットで検索する事する。
目撃したスタッフが検索し、遂に同じムカデを発見する。
そして説明を読みあげる。
【狂暴であり、触れたものには手当たりしだいに噛み付く。噛まれると痛みと痺れが強い。そして体質によりアナフィラキシーショックを発症する事もあり、噛まれた場合には速やかに医師の診察を受けることが望ましい。】との事。
「噛まれたら痺れるんか…死ぬ事は無いみたい」
その言葉で少し安堵が生まれる。
ただ「アナフィラキシーショックってなに?」
この言葉に再びwikipediaで検索をする。
【アナフィラキシーとは急性の全身性かつ重度なI型過敏症のアレルギー反応の一つ。ほんの僅かなアレルゲンが生死に関わるアナフィラキシー反応を引き起こすことがある。】
キャァァァァァァ!!し、し、死ぬことがあんの!?
そこからは無人島で1人乗りの船を奪い合うかの様に誰が退治するかを決める醜い争いが始まり、
2時間かけて大詮索するが見つからず、しょうがないので我々が死にそうになるぐらい事務所内に殺虫剤をふりまくる。
さすがに死んだと思いつつ、しかしその死顔を看取らない以上、気が気ではない。
事務所機能は完全に停止し、全員椅子の上で正座の状態で業務をし始めるが、
誰かがペンを落としただけでその音に全員が反応する状態。
結局それ以降1週間経ってもムカデは発見されず謎と未だに消えぬ恐怖を味わいながら業務をする状態…。
そうこのコラムさえも今、松原は椅子の上で正座をしながら書いているのである。
ムカデに噛まれる事を恐れ正座で何時間も業務を行う日々。
そして今…もう噛まれた方がマシでは無いかと思えるほど足が痺れている。
-2014/11/30 update-