127杯目 「人生とは選択の連続」
人生とは選択の連続。
常に2つの道の選択が続き、最後は誰も同じ場所に辿り着けない自分だけのゴールが待っている。
そして松原は2つの選択があった時に常に意識している事は舗装された道では無く、険しい道を選ぶ様にしている。
その道では大きな石につまずいたり、枝で足を切ったり、舗装されていない歩きにくい道だけどその分、人とは絶対違う場所に辿り着くと信じている。
そんな松原は頻繁にある出張の際にまずホテルを抑えないという選択を取る。
流木スタイルと呼ばれる手法で流れるままにその夜を明かす為である。
先日の東京出張ももちろん流木スタイルで向かう。
前日からほぼ寝ずに東京に辿り着き、イベントを終えて打ち上げへ。
もちろん二次会、三次会と続いていく。
気が着いたらもう朝の5時前。
やはりホテルを取らなくてよかったと自分の選択の正しさを噛みしめて、始発で神戸に帰る事にする。
時間を調べると4:49渋谷発⇒5:02品川着⇒6:00品川発で新神戸に帰れるでは無いか!
時計を見ると4:30。急いで渋谷駅に向かう。
そして無事4:49発の始発電車に乗り込めた。
車内はある程度空いているので座席に腰掛け、5駅先の品川までの10分程度を仮眠の時間に当てる事とする。
ご存じこの電車は山手線という電車で人生とは違って終着駅は無く、全29駅を永遠とループし続ける悲しい鉄道路線。
目の前に吊るされた人参を追いかける馬の様に、あるはずの無いゴールを目指して走り続ける。
岐路を楽しむ事が出来ない山手線がなんだか不憫に思えてしまう。
そんな事を考えていたが睡魔が覆いかぶさって来るので思考を止め、仮眠に入る。
電車の揺れとはまるでゆりかご。心地よい音と揺れ。
酔いも手伝い松原はほんのわずかな安息を手に入れる。
そして目が覚め、車内にある現在地の案内を見上げる。
すると「新宿」と「代々木」の間にいる。
「品川」までは7駅先。
まだ眠れるので目を閉じ…「ん?…な、7駅先っ!??!えええええええ!?!?」
確か5駅先だったのに何で7駅先に?
もしかして内回りじゃなく外回りに乗ったのか?
慌てて電話を飛び出し、代々木駅ホームに降り立つ
。しかし降り立ったホームは“内回り”。
もしかして山手線を一周してしまったのか?
山手線の一周は確か24分。
そんな時間を眠っていたとは思えないが、とりあえずまた7駅先の「品川」に向かう。
座席に腰掛け、襲ってくる睡魔に身を任せる。
そして目が覚めると「品川」まで10駅先の「高田馬場」。
し、しまった!は、ハメられた。
山手線の罠に完全にハメられたのである。
それから「品川」に降りれる事なく、山手線の蟻地獄にどんどんハマっていく。
もう時計は朝の8時を指す。
すでに3時間も山手線に閉じ込められている。
自分への苛立ちが溢れ、雪山で遭難した時ぐらい眠る事が怖くなってくる。
絶対寝ずに「品川」に辿り着く事を決意する。
山手線なんかに負けてたまるか!
…しかし人間がどんな兵器を発明しても睡魔に勝てる訳が無く、また眠りに落ち、気が付くと「日暮里」。
これはこのまま乗るより一回降りて外回りに乗る方が早いと思い、電車を乗り換えるもまた睡魔が忍び足で襲ってきて、気が付くと「新大久保」。
ここドコヤネン!
嗚呼ぁ。もう松原は二度と山手線から出る事は出来ないのか…。
時計の針は当初神戸到着時間の10時を指す。
そしてここで予想していなかったまさかの岐路に立たされる。
先ほどまで山手線は岐路の無い鉄道路線と憐れんでいたが、そんな事は無かったのだ。
人生とは選択の連続。
このまま山手線に乗り続け生涯を終えるのか?
それとも頑張って品川で降りるか?
どちらにしても険しい道のりである。
-2015/11/04 update-