130杯目 「審査員の松原先生」
とある午後、仲の良いラジオ局の方からの一本の電話。
少し興奮気味のテンション。
何事かと話を聞くと、関西の全てのラジオ局が自信の番組をエントリーして優秀作品を選ぶという1年に1回の日本民間放送連盟賞というのがあるらしく、それはそれは大層な一大行事で、優秀作に選ばれると名前も上がるし、とにかく獲得したいタイトルだという説明を受けた。
「で、それがどうしたんですか?」
一体、松原とどう関係があるのかは電話の意図が不明なので説明の途中で訪ねてみると、なんとノリでその審査員の候補に松原の名前を書いたら、何故か決まってしまったとの事!
「いや、どーせ決まる訳ないと思って、勝手に書いてもてん!だからゴメン!予定空けれる?」
いやいや、ちょっと待て!いきなり予定を空けれるか?って、何たる愚問!
こっちからしたら答えは1つである!
「何故、予定を空けないと思うのか?」である!
そんなよく解らないけどオモシロそうな物は1つ返事でOKである。
「やるやる~」と松原の軽快な返答に先方は少し戸惑いながら「ただこの審査員ってのは由緒があり、名誉な事だからちゃんとやってよ!」と釘なのか押しピンなのか解らないがチクっと刺されてしまう。
そんなもんラジオ番組を聞いて、選ぶだけなんて楽勝!
とヘラヘラしながら答え、電話を切る。
そしてその事をすっかり忘れた数日後、大量のCD-Rが事務所に届く事になる。
全9番組のCD-R9枚。
中の送付状を見ると1時間番組がほとんどで、全部聞くとなると約8時間。
しかも1番組毎に評価を細かく書く用紙も同封されていて、何かをしながらラジオを聞く訳には行かない。
そこからは毎日このプレッシャーが鉛の様にのしかかり、電車移動や自転車移動、寝る前などちょっとした空き時間を積み重ねる日々。
そして前日はほぼ徹夜でギリギリ聞き終わり、眠気と戦いながらスーツを身にまとい辿り着いた審査会。
こちらの想像を上回るスゴさで、TVで見た事ある様な景色である。
到着するなり、「先生、御待ちしておりました!」とまさかの先生扱い!
バカにされているのか…?
胸に不安を抱え、審査席に座ると目の前には関西のラジオ局の方々がずら~と座っている。
中には知った顔の方々が居て、緊張している松原を見て、“クスクス”と笑っているでは無いか!
そこでようやく気づく。
「…ハメられたのか。」
こんな会、事態が実は存在しないんだ…。
審査発表中も事あるごとに司会からは「先生!」とイジられ、会の事前に聞かれた飲み物も「アイスコーヒー」と答えたのにテーブルには「ホットコーヒー」。
松原が選んだ番組は結果、優秀作に選ばれず、そして挙句の果てに審査会が終わってから懇親会まで謎に2時間の待ち時間。
この2時間、一体何をしたらええねん!?
最初から気づくべきだったのだ。
冷静に考えれば、こんな凄い会に松原が選ばれる訳が無いのだ!
調子に乗った自分の馬鹿馬鹿しさを思いしらされる。
わかった!きっと、この大がかりなドッキリはこの9局の合同特番などで放送されるに違いないのだ!(その可能性はもっとない by一同総ツッコミ)
-2016/01/26 update-