140杯目「COMIN’KOBEはご迷惑?」
唐突ですが、皆様はCOMIN'KOBE(通称カミコベ)というイベントはご存知でしょうか?
毎年ゴールデンウィーク(以下GW)に開催している無料のチャリティーイベントで私・松原が実行委員長として2005年から開催をしております。
そんなCOMIN’KOBEの会場の隣に神戸で最も大きな病院があって、なんと松原はカミコベ開催の1ヶ月前にその病院に3週間ほど入院をしていたのです。
カミコベの会場から目と鼻の先の病院。
何か勝手に運命を感じつつ、人生初めての入院生活を過ごす。
手術の傷が痛過ぎて何も出来ず、でも暇な時間だけが流れる。
もう退屈過ぎて忙しい。
そんな暇が売れる程ある入院生活だが、COMIN'KOBEをやっていて良かったと思える事があったのだ!
それは、なんと!
病院内でCOMIN'KOBEのファンの方々が居て、松原の事を知っていてくれてとても親切にしてくれたのだ!
これは超嬉しい!!!!
病院内の喫茶店の店員さん、病院の職員さん、挙げ句の果てには医師の方まで!
そして皆さん、毎日の様に松原の病室まで面会に来てくれるのだ!
親切にしてくれて、特別な情報やこっそり色々な事を教えてくれて人の優しさに触れ、まるで“この病院は松原の為にある”と勘違いしそうになる。
後は看護婦さんさえ味方につけばこの病院は制覇出来る!
制覇したらこの病院にもステージを作って、会場の1つにしたろかな。
そんな野望を抱き、調子に乗っていた矢先。
逆にCOMIN'KOBEをやっていて後悔する出来事が起きるとはその時の松原は思いもしなかった。
***
毎朝恒例の血圧&体温検査と採血の時間。
今日は松原の病室に初めての看護婦さんがやって来た。
慣れた手つきで検査をしながら注射嫌いの松原に気さくに喋りかけてくれる。
「もうすぐGWですね~。何かご予定はあるんですか?」看護婦say。
「いや、大事な仕事(カミコベ)があって僕はこの十何年、休みは無いんです。」
「うわ~大変ですね。私もそうなんです。」
「え~、GWは病院お休みじゃないんですか?」
「実はGWに大きなイベントがこの病院の隣であるんです。」
お、これはCOMIN’KOBEの事じゃないのか?!
キタキタ!!!!!!!
「すっごく大きなイベントで …フェスって言うんですか? 私は音楽に疎くてわからないんですが、なんか有名なアーティストがいっぱい出るみたいなんです。」
ほら、来た。間違いない!これで遂に看護婦さんまで手に入れれる。
さぁ、気づきなさい。
今、アナタの目の前の人は主催者なんだよ~!
ふふふ。どのタイミングで打ち明かして、驚かせてやろうかとワクワクする。
「それでね、聞いてくださいよー!そのイベントのお客さんが救急で沢山来て大変なんですよー!なので大忙しで休み所じゃないんです。ほんと迷惑してるんですよ〜笑」
な、なにっ!?その展開!?
まずい!イベントの印象が超悪い!何とかフォローをしなければ!
急いで脳内会議を行う。
「で、でも沢山、人が来て盛り上がるから街にとっては、いい事ですよね~?」
どうだ!看護婦!
答えてみろ!
「う~ん、そうなんですが…電車も満員で混みまくってて患者さんも職員も迷惑だな~って話してるんですよ~。」
ちーーーん!終了。
もうお手上げだ。
ここは松原が主催者という事を隠してやりすごすしかない。
もし松原がその迷惑なイベントの主催者だとバレたら、ただでさえイベントの印象が悪いのに加え、イベントの悪口を言ったこの看護婦さんと松原の間に“きまずさ”しか残らない。
またこの看護婦さんが担当になって採血してもらう間の数分間をどうしのげと言うのだ!それは避けなければいけない。
…大丈夫。落ち着け、松原。きっとバレない。
俺を誰だと思っている。
いくつもの修羅場はくぐって来た。
これぐらい訳も無い。
という事で話題をさり気なく変えて、この場を納める事に成功。
穏やかな入院生活を送るためにこの看護婦には隠し通す必要がある。
あと数日の入院なので楽勝だ。
松原はどんな困難も乗り越えて来たのだ!
そしてその夜。
カミコベファンの医師の方が病室に面会に来てくれた。
「調子はどうですか~?」医師say。
暇すぎる松原にとって大変有り難い限り。
いつも通りその医師と音楽の話など楽しく雑談をしていると、、、
コンコン!部屋をノックする音。
「回診に来ました〜」
明るい声と共に看護婦さんが松原の病室に入って来たら…
な、なんと!!!!!!!
今朝の看護婦さんでは無いか!
まずい、この医師が余計な事を言わなければいいのだが…。
そんな不安をよそに看護婦さんは松原の病室に主治医以外の医師がいる事に驚き、
「あれ?○○先生、どうされたんですか?」say。
「あ、松原さんは僕の大好きな音楽イベントの実行委員長で…」
ちょ、ちょっとぉぉ!!!!!!
止めてーーー!言わないでーーーーー!
時すでに遅し。そこからCOMIN'KOBEを熱心に説明する医師。
それがあの迷惑なイベントだと気がつかないフリをしながら松原の腕から優しく採血をする看護婦。
絶対に気がついている。
「へ〜、すごいですね〜」
当たり障りの無い相槌で、その迷惑なイベントの主催者の血圧を測る看護婦。
それぞれの想いが交差する3人の病室。
COMIN'KOBEをやっていて初めて後悔した夜、
穏やかな入院生活は終わり、松原の血圧だけが高く上昇する。
-2018/02/05 update-