29杯目 「M-1に挑戦」
僕は太陽と虎というライブハウスの松原といいます。
そんな僕はライブハウス以外にも色々な顔を持ってる。
昼は社会に紛れ、夜はライブハウス。真矢の顔は…
って誰が真矢(LUNASEA)の顔やねんっ!
…見事な掴みをご覧頂いた訳ですが、そんな松原はこの度、あの笑いの頂上決定戦「M-1グランプリ2006」にエントリーしてきました〜!
「何でライブハウスの人がM-1に出るの?」って?
逆に君は何で出ないの?
そこに山があったら、登る。
ただそれだけ。
松原の前にM-1があった。
だから出る。
という事でまずは1回戦!
その前日まで余裕をかまして何もネタを作っていなかったので慌てて相方の当店園長の風次とネタを作り、ライブハウスの1番目で披露する。
しかし死にたいぐらいのスベる…。
当日出演してたバンドに会いたくないので全員殺しそうになる。
だが、このままではヤバいので急いで修正して、終演後に再度披露。
まーまー、受ける。
だがこんなもので優勝できる訳がない。
心配するバンドマンが「明日1回戦ですが勝てますか?」などとほざく。
「俺を誰だと思ってる!松原さんだぞ!1回戦ぐらい楽勝で、優勝を狙う!」
一円にもならない見栄を切る。
そして不安はMAXな状態のまま当日11時に【よしもと∞ホール(NGKホール)】に到着。
しかし風次は来ない…。
焦って電話すると
「もう行きたくないです。」
コラァーー!お前小学生かっ!
なんとか説得してこちらに向かわせる。
とりあえず相方の到着まで会場の偵察に入るが、そこは想像を絶する世界。
50人ぐらいの観客は確実に1回戦の我々を見下して「笑ろたるかい!」みたいな空気。
凄い独特のアウェー感。
総勢200組の漫才師達のネタのクォリティーに衝撃!
1年ほどかけてネタを作ってこの日に照準をしぼった彼らと比べ前日にネタを作った松原たちなんて大至急ミジンコである。
そうこうしてると風次が到着し、ネタ合わせの為に近隣の人気のない場所を探すが、さすがM-1会場の周辺!あちこちで先客のコンビが並んでネタ合わせをしている。 これまた凄い光景である。
時間が迫り、我々は舞台裏に呼ばれるが、そこはディズニーランドの様な光景。
コント用レオタードとか柔道着とかパンダの衣装の奴らが、所狭しとウヨウヨいて、しかもめちゃくちゃ緊張した顔。着ぐるの衣装で顔マジは、人に一番見られたくない姿であろう。
でもこっちは遊び半分で参加している立場。こういっちゃ失礼かもしれませんが、超面白い光景。
そんな松原も遊び半分のくせに、出番が近づくにつれ緊張が襲う。
今までCOMIN'KOBEの舞台やTVなどに出る機会はあったが、そんなの比べられない程の緊張感。風次は己を見失い、ずっとウィスキー片手に現実逃避。気持ちは解る。
そして時は満ちた。
「松風さん出番です」
青ざめたまま、出ばやしが流れ登場する我々。
「はいっ!ど~も~松風で~す!」
遂に始まった我々のネタ。
「ウケる!」と思ってたのがスベって、とりあえず入れたボケがウケる。
… ホントに笑いは生き物。“間”一つ。
という事であっと言う間にネタを終えた我々。
え?どうなったかって?
当然、審査委員から「もう優勝!」と絶賛され、会場は盛り上がり、 関係者が駆け寄ってくる始末。
松原はツッコミなので、会場のボケの奴が「是非一緒にコンビを!」と引き抜きの嵐!
しかーーーーーーーし!!!
松原たちの後のコンビが「今年で結成10年目なので俺たちはこれが最後の挑戦なんです。」(*M-1は結成10年目までしか参加できないルール)
そういって舞台に挑むが無念の敗退。そして松原たちの前で泣き崩れている。
心優しい松原はそのコンビに近づき、声をかける。
「俺たちの2回戦の切符をやるよ。俺たちは来年もあるけど、君たちは最後の挑戦なんだろ!」
俺たちは遊び半分。ここで彼らの涙を見て見ぬ振りをして勝ち進む勝利に何の価値があるのだろう。
例え優勝しても、人間が腐るなんてまっぴらだ。
そう言い残し去る我々。
俺たちには未来がある。
という事で一回戦で、自らM-1に背を向け、会場を後にする。
もちろん帰る場所は、音楽が鳴り止まないライブハウス。
俺たちには音楽がある。
M-1の優勝より、ライブハウスで笑ってくれるあなたの為に今日も頑張りたい。
*注意)「優勝するわ!」って意気込んでM-1に出たのに1回戦敗退したのが恥かしくて、作り話をでっち上げて、言い訳をしてる訳ではありません。全然ウケてました。
-2006/11/05 update-