37杯目 「僕の名は。」
店員「ご注文はお決まりでしょうか?」
僕「ええ、と・・…こ、これ。 ほ、北海道生まれの手づくりあつあつフライドポテトを、ひとつ」
店員「ポテトがおひとつですね…」
僕「!!?」
社会では理解し難い事だらけで毎日フラストレーション祭りデスよね。
そんな僕は先日まさかのヤンキーに絡まれました。
28才になったばかりの僕はヤンキーに絡まれました。
この歳になってビックリです。
6人の集団のヤンキーに絡まれたのですが、 店の売り上げをたまたま持っていてぶっちゃけ大焦り。
しかし!!!
そのヤンキー集団の中に何故か一人だけいい奴がいて、どういうわけかその彼が松原を助けてくれようと奮闘してくれるのです。
良いヤンキー「おお!止めたれや!こいつ俺の知り合いやねん。」
怖いヤンキー「嘘つけ!ほんなら何て名前やねん!」
良いヤンキー「鈴木や!な?」
(ここは話しを合わせるしか無い。)
松原「う。うん。鈴木って言います。」
怖いヤンキー「何の連れやねん?」
良いヤンキー「バスケ時代の知り合いやねん。」
松原「う、うん。よく一緒に試合して、リバウンドが得意です。」
怖いヤンキー「うそつけコラァ!!!」
怖いヤンキーがブチ切れた瞬間、恐らく通行人の通報によりパトカーが到着し、一安心。その場で警察から色々事情を聞かれる。
「君が被害者?名前は?」
そう。松原はついさっき「鈴木」になったばかり…
ここでも「鈴木」で通さないと良いヤンキーの顔が潰れてしまう…
「鈴木と言います。」
助けてくれたあのヤンキーの為にも、「鈴木」になるしか無い。
「鈴木」という別人格を松原の中に降臨させ、 「鈴木」として新たな人生を送る。という事で架空の鈴木は架空の情報を伝え、国家権力を欺く。しかしこれはあの優しいヤンキーの為である。罪の意識はない。
一通り事情聴取は終わり。「じゃ、鈴木くんは、もう帰っていいよ」警察say。
良いヤンキーも「もうええからいけや。」say。
なんていいヤンキーなんだ!
鈴木「お、おう。またな」
という事で松原は少しの時間だけだが「鈴木」に成りすまし一命を救われたのだった。しかし本当によく無事で終われたものである。改めてあの優しいヤンキーに感謝し、それ以来、「鈴木」という名前に愛着さえ湧くほど鮮烈な事件として記憶に刻まれる。
そんな奇跡の鈴木事件から時が経ったとある日。
ライブの打ち上げを終え、会計でひとり遅れて居酒屋を出ると、店の前でヤクザ風の男が、バンドマンに激しく言いがかりをつけているでは無いか。一触即発の状況で、慌てて松原は仲裁に入る。
しかしこのヤクザ風の男は、相当酔っ払っている様子で、完全にブチ切れモード。「俺は凄い力を持っているんじゃ。」という謎のPRを始め、激しく言葉で威嚇してくる。
こっちは10人ほどいるが、相手は1人。いくらヤクザだったとしても何とかなる気がする。最悪の事態を考え、策を巡らせていると急にヤクザ風の男から「お前らは仕事、何してるねん!」という合コンみたいな質問が飛んで来た!
ええ?急に何それ。。。
とりあえずバンドマンの子①が真面目に「僕は○○というパンチコ屋で働いてます」と答えると、「○○やったら社長の事、よーしっとんじゃ!潰すぞ!」ヤクザ風男say。
え…!なに、その攻撃方法?ウケ狙い?
面白いので続々と皆で仕事を言っていく事になる。
バンドマン②「僕は○○系列の喫茶店です。」
ヤクザ「よー知っとんぞ!○○系列って言ったら○○さんのトコやないけ!あそこのボディーガードやってる奴と刑務所一緒やったんや!そんなもんお前んトコも潰してますぞ!」
よく解らないがとにかくこれがこいつの威嚇方法らしい。腕力よりも仕事を無くならせて経済的&精神的に攻撃をしてくる作戦のようである。
すると次のバンドマン③が「僕はコンビニで働いてます」と答える。
おっ!ナイスジョブ!これはさすがに難しいやろ?w
全国チェーンのコンビニで、誰か知ってるぞ的威嚇は難しいだろう。
しかし、甘かったのは松原の方であった。如何なる仕事に対しても術を持っているようで、「俺はコンビニに商品を配送している会社とダチやねん!商品流さんと、お前のコンビニ潰してまうぞ!」
な、なんとーーーーーー!!!!!!
経営的観点からの威嚇攻撃!!!!!!!!!!!!!
目の付け所がシャープ!こいつ只者じゃない!
そして残されたのは松原のみ。どうやって困らせてやろうか考え、
松原「僕は無職です。」と答える。
さすがに無職ではどうする事も出来まいw
こいつの攻撃に大いなる期待が高まる。
「じゃーお前名前を教えろや!神戸のどこでも働けんようにしたるわい!名前を言え!」
キターーーーーー!思わぬ角度からの攻撃wwwwwww
その路線があったか。この男、もはや天才。
もう尊敬の念すら抱く程である。
精一杯敬意を持って「松原って言います。」と、この天才に伝える。
「松原やな!嘘ついたら殺すゾ!なぁ?コラァ!」
もうすっかりファンとなった松原は嘘では無い事を必死で伝え、「嘘だったら死んでもいいです!」と自信満々で天才の目を見つめる。
「わかった!お前は松原やな!もうお前は神戸で働けへんようにしたるからな」ベロベロの口調で経済的な威嚇攻撃が放たれたその時!
また恐らく通行人の誰かの通報でパトカーが数台が到着した。
「やっと助かった」安堵するバンドマンたち。
もうちょっと遊びたかった松原。
… パトカーから出て来た警官はまず天才ヤクザに質問をする。
警官「喧嘩か?君がこの子らに絡んだんか?」
天才「うるさい!俺は普通に、この松原と話しとるだけじゃ!」
警官「どの子や、松原って??」
と尋ねながら警官と松原の目があった次の瞬間!
「おお、君は確かあの時の… え〜っと、、、あ!鈴木君やないか?」
神様はなんてイタズラ好き。
先日のヤンキーに絡まれた時に助けてくれたあの警官である!!
数奇な縁を感じると同時に、最悪のシナリオが頭に思い浮かぶ。
そう、名前である。
天才「おいっ!コラァ!お前、鈴木言うんか?松原ちゃうんか?ゴラァ!嘘ついたんけ?」
違うねーーーーーーーん!違うねん!信じて!僕は松原やねん!!
うわ〜〜!こんな奇跡ある〜?
警官も「ん?君は鈴木くんじゃ無いのか?」
いや、ややこしくなって来たーーーーーーー!!!!!!!
あの時は鈴木やってんけど、ほんまは松原やねん!!!!!
自分でも何を言ってるか解らない。
もはや警官の目にはこのヤクザ風の男より、松原の方が怪しく映っているに違いない。
「お前、松原ちゃうかったんか!」「君は鈴木じゃ無いのか?」
天才と警官に挟まれ、もうどうしたらいいか解らなくなる。
もう僕は誰なんだ…
-2007/07/05 update-